2010年6月12日(土)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
オバマ米大統領に、「トラスト・ミー」(私を信じて)といったのは、鳩山前首相。菅新首相も、“トラスト・ミー”です▼「ぜひとも私を信頼していただきたい」。昨日の所信表明のしめくくり部分です。菅首相は、「国民の皆様」によびかけました。父親がサラリーマンという生い立ちも紹介し、華麗な一家の出身で信を失った鳩山氏との違いを演出しました▼しかし、信頼を求める割に肝心の約束事がはっきりしません。たとえば、「医療の安心の確保」というけれど、民主党が廃止を公約した「後期高齢者医療制度」をどうする? 一言もなしです▼菅首相は、前首相が公約違反を問われて困った経験に学んだのか。自分の手足をしばる話はしない、過去を振り返らず、「国民の皆様」にも忘れてもらおう、と。米軍の普天間基地をめぐっても、「最低でも県外」の鳩山氏の公約などなかったかのように、「日米合意を踏まえつつ…」▼公約にそむき、日米合意を交わした前政権。菅首相は、鳩山氏が辞め「けじめをつけられた」といいます。さばさばした物言いは、してほしくありません。「けじめをつけた」とは、基地撤去を願う沖縄県民の総意を体よく切り捨てることではないか▼菅首相の“トラスト・ミー”は、少々押しつけがましい。国民が信頼してくれたら自分も指導力を発揮できる、というのですから。しかし、国民が「沖縄」や「医療」の公約実現へ指導力を発揮するよう後押ししても応えなかったのは、民主党政権でした。