2010年6月11日(金)「しんぶん赤旗」

イラン追加制裁を決議

国連安保理

反対・棄権が3カ国

制裁ではなく対話主張


 【ワシントン=西村央】国連安全保障理事会は9日午前(日本時間10日未明)、ウラン濃縮を続けているイランの核開発問題で追加制裁を科す決議案を採択しました。イラン核問題での制裁決議は4回目。今回の採択では賛成が5常任理事国をはじめとする12カ国で、ブラジル、トルコが反対、レバノンが棄権にまわりました。


 決議は「これまでの関連決議にそった、ウラン濃縮の遅滞ない停止」を要求。加盟国に対し、戦車や攻撃ヘリ、ミサイルシステムなどの大型兵器の対イラン輸出禁止を求めました。安保理が昨年採択した北朝鮮制裁と同様の公海上での船舶などの貨物検査を新たに付け加えました。

 イラン国内の政治経済に影響力を持つ革命防衛隊の関連団体を資産凍結対象に加えるなど、金融上の制裁実施も新たに盛り込みました。

 制裁を決議した公式会合での討論で、米国のライス国連大使は「追加制裁は、イランがこれまでの安保理の要求を拒否し、平和や安全への脅威を増してきたことに対応したもの」と主張しました。

 賛成した中国の李保東大使は、「これまでの決議の完全実施を求めたもの。外交的努力のドアを閉ざすことを意味しない」と述べました。

 決議に反対したブラジルのビオッティ大使は、ブラジル、トルコとの会談で、5月17日にイランが低濃縮ウランの国外移送で合意したことをあげ、「現時点では制裁は効果的ではない」と指摘。「対話と交渉を通じてイランとの共同を達成していくことが、唯一の可能な方策だ」と強調しました。

 棄権に回ったレバノンのセラム大使は、「ブラジル、トルコによる(イランとの)交渉での合意は問題解決に道を示した」とこの方向での解決支持を表明。先の核不拡散条約(NPT)再検討会議が打ち出したイスラエルの核施設を国際原子力機関(IAEA)の査察下に置くことを求めることへの期待も述べました。


解説

信頼醸成と交渉による解決を

 9日採択の対イラン制裁決議は、同国の核開発をめぐり新たな動きも出る中で採択され、全会一致となりませんでした。この問題で決議に反対する国が出たのは初めてのことです。

 決議に反対したブラジルとトルコは5月中旬、イランとの間で、低濃縮ウランをトルコに移送し、外国製の研究炉用濃縮ウランと交換することで合意(3カ国合意)していました。

 しかし、オバマ米政権は、3カ国合意が国際的な懸念に応えない不十分な内容であり、時間稼ぎだと見て、決議採択を急ぎました。

 追加制裁に消極的だったといわれるロシアと中国は、3カ国合意を歓迎しつつ、イランがウラン濃縮活動の停止を求めた安保理決議に従わず、国際原子力機関(IAEA)に非協力的な態度をとっていることなどを指摘し、制裁決議に賛成しました。

 追加制裁を科されるイランは決議に反発し、欧米諸国との対立をいっそう深めることは間違いありません。

 また、事実上の核兵器保有国であるイスラエルやインドには技術支援を公然と進める一方、イランなど特定の国に非難と制裁の矛先を向ける欧米諸国の「二重基準」に対し、非同盟諸国などは反発を強めています。

 安保理での議論では制裁に賛成票を投じた国の中でも、ブラジル、トルコの外交的努力を評価し、信頼醸成にもとづく交渉の必要性を説く国が少なくありませんでした。国際社会は、イランの核開発問題をめぐる問題を交渉を通じて平和的に解決する道こそ、追求すべきです。(浅田信幸)





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