2010年6月11日(金)「しんぶん赤旗」
「政治とカネ」
“辞任でけじめ”とんでもない
鳩山由紀夫前首相と小沢一郎前幹事長の「政治とカネ」の問題について、菅直人首相は辞任で「一定のけじめ」といっていますが、とんでもないことです。前首相も小沢氏も、みずからの疑惑について、ほおかむりしたまま。「クリーンな政治」をいうなら証人喚問を実現するなど、説明責任をはたさせるべきです。(「政治とカネ」取材班)
12億円の使途に沈黙
鳩山前首相 母親から資金提供
前首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」(友政懇)による偽装献金疑惑は、同会の会計責任者だった勝場啓二元公設第1秘書らが、2004年〜08年の5年間で、個人献金が約2億700万円、パーティー券収入が約1億5300万円の計約3億6000万円を虚偽記載していたというもの。関連政治団体「北海道友愛政経懇話会」分も含めて、虚偽記載の総額は4億円を超します。
説明されず
問題の核心は、母親から提供された巨額資金が何に使われたのか、ということです。
前首相側の説明によると、偽装献金の原資は(1)母親から02年以降、合計12億6000万円の資金提供(2)自身の個人口座から3億2240万円―の計15億8240万円。使途が明らかになっていないのは、友政懇などの虚偽記載を補てんした差額約12億円という膨大な額にのぼります。
前首相は3月3日の参院予算委員会で、「(秘書の)裁判が終わったら説明する。いいかげんに済まそうというのではない」といっていましたが、いまだに、なんの説明もしていません。
勝場元秘書が「政治活動費が足りなくなった」として、前首相の母親側に働きかけ、月1500万円の資金提供が始まったのは、前首相が民主党代表選に出馬した02年夏。前首相の政策グループ「鳩山政権を実現する会」(現・政権公約を実現する会)は同年9月、旗揚げし、毎年、軽井沢のホテルで「合宿研修」をするなど、活発な活動を展開してきました。
母親から提供されたカネが、勢力拡大に使われたのではないのか―。
ヤミの中で
「実現する会」は政治団体としての実態があるのに、ことし2月まで無届けでした。03年の総選挙の際、勝場元秘書が民主党新人候補側に200万円の陣中見舞いを渡したという裏金疑惑が報道されていますが、まったくヤミの中です。前首相は、12億円のカネの使途について、国民に説明する責任があります。
|
核心はゼネコン献金
小沢前幹事長 虚偽記載20億円
小沢前幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件は、陸山会が東京都世田谷区内の土地を2004年10月に購入したのに、政治資金収支報告書に05年1月に購入したとするなど、多くのウソの記載をしていたというもの。虚偽記載の総額は3年分で20億円を超えます。
東京地検特捜部は、石川知裕衆院議員ら3人の小沢氏の秘書・元秘書を逮捕・起訴しました。しかし、小沢氏本人については「嫌疑不十分」だとして不起訴処分にしました。
関与が焦点
事件をめぐっては、小沢氏の関与の有無が大きな焦点となっています。
小沢氏は関与を全面否定していますが、石川被告は「そうか。そうしてくれ」と、虚偽記載をする際に小沢氏の了承を受けたと供述しています。秘書だけの判断で、20億円を超える多額の虚偽記載ができるのか、疑惑は深まる一方です。
4月27日の検察審査会での議決では、全員一致で「起訴相当」と判断しました。議決書は「絶対的権力者である小沢氏に無断で(3人の秘書が)本件のような資金の流れの隠ぺい工作などをする必要も理由もない」と断じています。
同時に解明が求められるのは、土地購入にあてた約4億円の原資はどういうカネかという点です。虚偽記載してまで隠そうとしたものはなにか―。
この疑惑と切り離せないのが、小沢事務所が東北地方の公共事業をめぐる談合組織に深く関与していたという指摘です。大手ゼネコン「鹿島」を仕切り役とした談合組織に小沢事務所が「天の声」を発していたといいます。
ゼネコン各社に献金と選挙協力を競わせ、談合組織が「本命」業者を決めても、小沢事務所の了承なしに、受注ができなかったとする証言がゼネコン関係者から相次ぎました。
ウラ献金が
小沢氏の地元、岩手県奥州市で建設中の胆沢ダムの本体工事受注では、中堅ゼネコン水谷建設側から、小沢氏側に計1億円のウラ献金が渡されたことを「赤旗」日曜版が報じました。
こうした数々の疑惑について小沢氏は「検察の捜査に勝るものはない」と不起訴処分をタテに、国会での説明を拒否してきました。
しかし、事件の核心は、政治資金規正法違反事件にとどまらず、ゼネコンのヤミ献金が流れていたのではないかということです。「けじめがついた」などと見逃されるものではありません。小沢氏の証人喚問実現は、菅首相と民主党が果たすべき最小限の責任です。
|