2010年6月11日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
第1回サッカー・ワールドカップが開かれたのは、80年前の1930年です。当時、アフリカ大陸の独立国は二つだったといいます▼エチオピアとリベリアです。エチオピアは、紀元前1000年ごろ王国ができた、エジプトと並ぶアフリカ最古の国。西のリベリアは、アメリカの奴隷だった人々がアフリカに帰り、入植した国です▼形の上の独立国だったエジプトと南アフリカが、名実ともにイギリスから独立するのは、第2次大戦後です。しかし、白人支配が続いた南アでは、黒人差別の人種隔離政策に終止符を打つまで、完全独立から33年かかりました▼さあ、11日から南アフリカでアフリカ大陸初のワールドカップ大会。いまや強豪チーム、有力選手の多いアフリカも、戦前は第2回大会にエジプトが出場したのみでした。独立が相次いだ50年代、60年代から、各国が続々と出場へ名乗りをあげました。しかし壁は厚く、66年8回大会で棄権事件がおこります▼アジア・アフリカ・オセアニアで1チームしか出られないしくみに抗議し、アフリカ諸国と韓国が棄権しました。その時、棄権せずに出た北朝鮮が優勝候補イタリアを破りベスト8へ。“伝説”と化した大番狂わせです。北朝鮮の44年ぶり出場も、今大会の話題です▼いま南アフリカでは、「ウブントゥ」(人間性)についてよく語られているそうです。“人間は1人では人でなく、他者を通して人になる”意味を含むというウブントゥ。サッカーの精神に通じる言葉かもしれません。