2010年6月10日(木)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 朝鮮が、日本の植民地だったときの話です。急行列車の運転が始まり、急行券が売り出されました▼ある朝鮮の人が語ったそうです。「速くては景色もゆっくり見られなくなってしまうのに、急行券なんぞでよけいに金を取るとはおかしい」。お金で時間を買う急行券。しかし、確かに速さは犠牲を伴います。日本でなら、車窓からゆっくり眺めたい富士山もあっという間に遠ざかります▼時間に追われる今の時代について考えさせる、急行券の逸話です。きょうは「時の記念日」。90年前の1920年、時間をまもり生活を改善・合理化するという目的で定められた記念日です▼現代人の多くは、急行や特急のような日々を過ごしているのかもしれません。時間との勝負の仕事。仕事がないときも、なにかしら気ぜわしい。ゆっくり見聞きしたり考えたりするゆとりが奪われ、大切な事柄を見過ごす危険に陥りやすい。記者も、身に覚えが大ありです▼金力や権力の持ち主が、人々の視線や思考を一つのところに向けさせる機会も生まれます。突っ走る列車の窓の外に、よく目立つ同じ看板を切れ目なく立て、人の目を引くように。たとえば、鳩山政権の退場以来、テレビや新聞は菅新政権についてたっぷり報じています。前の政権との、つながりを絶ったかのように▼さて、参院選までの時間は少ない。しかし、心に響く訴えなら情報の誘導に負けず、あわただしく暮らす人々にも届くでしょう。投票日が決まってくる選挙では、「時は金」です。





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