2010年6月9日(水)「しんぶん赤旗」
メディアがもてはやす菅内閣
「脱小沢」どころか「小・鳩隠し」
マスメディアは、8日発足した菅新内閣を「脱小沢内閣」などともてはやしています。民主党内でも「『脱小沢』色を鮮明にした組閣」(中堅議員)という声が飛び交っています。本当にそうでしょうか。
「脱小沢」の“根拠”は、「政治とカネ」で辞任に追い込まれた小沢一郎前幹事長に批判的な議員が閣僚に起用されたことです。しかし、問題は顔ぶれより中身です。
その点で、菅内閣は「脱小沢」どころか、「小・鳩隠し」だといっても過言ではありません。
けじめは
「政治とカネ」ではどうか。「鳩山(由紀夫)総理が辞任し、最も党の中で重要な役職である幹事長を(小沢氏が)辞任するというのは、一定のけじめではある」。菅直人首相は8日の記者会見でこう述べ、鳩山、小沢両氏の辞任によって「政治とカネ」の問題の“けじめ”がついたとの立場を改めて示しました。
「政治とカネ」の対応で小沢氏を批判していた枝野幸男民主党幹事長も、同氏の辞任で「一定の政治的なけじめをつけられた」(7日の記者会見)と擁護する始末です。
しかし、辞任によって国民が求める真相は明らかになったのか。まったく逆です。鳩山内閣のときと同様、民主党は疑惑の真相解明さえ行わず、日本共産党など野党側が求める小沢氏の国会での証人喚問にも拒否し続けているのです。「脱小沢」「クリーンな民主党」といいながら、「小・鳩隠し」をしているのが実態ではありませんか。小沢氏を国会に招致し、国民の前で真相を明らかにさせてこそ「脱小沢」といえるものです。
顔ぶれも
「小沢隠し」だけではありません。鳩山前内閣の退陣の要因となった米軍普天間問題では「鳩山政権の思いをしっかり受けとめる」(菅首相)として、「鳩山路線継続」を打ち出しています。
鳩山前内閣が決めた沖縄・名護市辺野古への新基地建設と、鹿児島・徳之島はじめ全国への米軍訓練拡大という最悪の日米合意を「原則としてしっかり守っていく」と言明。普天間基地問題を打開するどころか、鳩山前内閣が沖縄県民、国民を裏切った方向をそのまま推し進めようとしています。
閣僚の顔ぶれをみても、日米合意を結んだ当事者の岡田克也外相、北沢俊美防衛相を留任させ、前原誠司沖縄北方担当相も続投です。
暮らしの問題でも、鳩山内閣で公約破りと厳しい批判を浴びた後期高齢者医療制度の廃止を先送りしたことへの反省はなく、長妻昭厚生労働相は続投です。
こうして鳩山退陣につながった民主党政権の公約破り、裏切りになんの反省も打開の方向も示せていないのが菅内閣です。これでは表紙を替えただけで、政治の中身は何ら変わらないのは明白ではないでしょうか。(高柳幸雄)