2010年6月9日(水)「しんぶん赤旗」

菅新内閣 反省どこに?

前政権退陣させた大問題 打開の方向見えず


 8日発足した菅内閣。普天間基地問題に「政治とカネ」、後期高齢者医療制度や労働者派遣法など暮らしにかかわる問題など、鳩山前政権の退陣につながった諸懸案について、どう反省し打開するのか。新内閣の顔ぶれやこれまでの言動からは、その方向がみえてきません。


普天間

「日米合意」を誓約

沖縄の怒り 眼中になし

 米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)を同県名護市辺野古周辺に「移設」する日米合意履行のための“居抜き内閣”―。メディアからもこう評されるように、菅直人首相は、日米合意(2プラス2合意)を交わした当事者の岡田克也外相と北沢俊美防衛相をはじめ、沖縄担当相に前原誠司国土交通相を留任させました。

 菅氏は国会で首相指名された直後に、米側の申し入れでオバマ米大統領と電話会談(6日未明)。普天間問題について大統領から「日米合意を基に対応していこう」と求められ、早速、「合意を踏まえ、しっかり取り組んでいきたい」と誓約するなど、沖縄県民、国民の怒りなど眼中にない様子です。

 留任した岡田外相と北沢防衛相は、昨年10月のゲーツ国防長官の来日など米側の圧力を受け、早くから「国外、県外移設」に否定的でした。

 北沢防衛相は辺野古「移設」の日米合意について、「かわいい息子のようなもので、頭の先から足のつま先まで全部よくできた」(5月28日の記者会見)と絶賛。鳩山由紀夫首相の辞意表明翌日の3日には、首相候補の菅氏に会い、日米合意を堅持するよう要請しています。

 ほかの2氏も、日米合意について「内閣を挙げて取り組んでいく」(岡田外相)、「国と国との約束、特に日本の安全保障にかかわる約束をしっかり守って履行していくことは大変重要」(前原沖縄担当相)という立場です。

 日米合意は、辺野古周辺に建設する新基地の位置や工法などの検討をいかなる場合でも8月末までに完了させるとしています。しかし、それを進めれば進めるほど、世論調査で辺野古「移設」反対が8割を超える沖縄県民との矛盾はいっそう激しくならざるを得ず、破たんは免れません。

暮らし

公約破りそのまま

消費税増税論者ズラリ

 菅首相をはじめ、仙谷由人官房長官、野田佳彦財務相、玄葉光一郎民主党政調会長兼担当相―いずれも消費税増税発言を繰り返してきた政治家です。

 菅首相は財務相時代から「増税しても使い方を間違えなければ景気はよくなる」と、増税で景気が回復するというとんでもない理屈を持ち出しています。

 玄葉氏は7日にも、「参院選マニフェストに書かないといけない」とのべ、増税路線に踏み出す考えを示しました。

 その一方で、財界・大企業の求めにこたえて「成長戦略」の名で法人税減税を検討しています。

 世論調査で要求が強い景気・雇用対策のためにも、国民の懐を温め、内需を拡大することがカギです。これに真っ向から反する庶民増税に踏み出すのでは打開の方向が逆さまです。税収低迷で財政健全化も遠のきます。

 財源をいうなら、大企業・大金持ち優遇税制と軍事費にメスを入れることこそ必要です。大企業の巨額の内部留保を還元させ、最低賃金や下請け単価引き上げなどで内需主導の経済成長を築くことが求められています。

 また、労働者派遣法の抜本改正と後期高齢者医療制度の廃止も待ったなしの課題です。

 鳩山前政権時に提出された派遣法改定案には「使い捨て労働」を横行させる“大穴”が開いています。後期高齢者医療制度の廃止は先送りのうえ、新制度案では高齢者差別を75歳から65歳に広げようとしています。

 鳩山内閣が国民を裏切ってきた問題について、国民の立場で解決できるかどうかが問われています。


増税発言くり返す

 菅直人首相 消費税について本格的な議論を3月から始める(2月14日、フジテレビ番組)

 仙谷由人官房長官 消費税は避けて通れない(1月10日、徳島市内)

 玄葉光一郎担当相 消費税を含めた税制の抜本改革を行うことを参院選のマニフェストに書かないといけない(党政調会長の就任会見、7日)


政治とカネ

小沢氏らの喚問に背

「けじめついた」と幕引き

 鳩山前首相や小沢一郎前幹事長の「政治とカネ」問題。民主党は、国会での証人喚問にも応じず、フタをしてきました。その真相解明は、欠かせない課題です。FNNの世論調査(5、6両日実施)では、菅首相への期待で最も多かったのが、「政治とカネの問題の対応」(61・0%)でした。

 ところが、民主党の枝野幸男幹事長は7日の就任会見で、小沢氏が幹事長を辞めたことで「一定の政治的なけじめをつけられた」と発言。小沢氏には「防御権」があるなどと擁護し、弁明が偽証罪に問われない政治倫理審査会への出席を含む国会招致については、「本人の希望、要望がベース(土台)になる」として、否定的な姿勢を示しました。

 菅首相が「国民の信頼を回復する」(4日)というのなら、小沢氏らの証人喚問は最低限の要件です。

 企業・団体献金禁止についても、枝野氏は、「個人としては一切受け取らない」(7日)と述べましたが、党として受け取らないという姿勢は示しませんでした。しかも、枝野氏は、「いわゆる政治団体は別として」と条件をつけました。労組・団体からの企業・団体献金には、政治団体を経由する“迂(う)回(かい)献金”もあります。枝野氏の認識では、この“抜け道”を残すことになります。

 鳩山、小沢両氏の疑惑を解明する意思も示さないまま、いくら「民主党の新しい出発」(枝野氏)などと訴えても、とても額面どおりに受け取ることはできません。





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