2010年6月8日(火)「しんぶん赤旗」

主張

メキシコ湾原油流出

石油依存の見直しが不可欠だ


 米南部ルイジアナ州沖の深さ約1500メートルの海底で、採掘中の海底油田から大量の原油が噴き出しています。流出は発生から1カ月半になります。米史上最悪の原油流出事故は、なお流出を食い止めるめどがたたず、被害の全容もつかめていません。

 米国での事故は、大企業の野放図な活動と石油に依存したエネルギー政策への警鐘です。日本周辺でも、北海道に面したサハリン沖で、日本企業も参加して海底掘削が行われています。流出事故が起きれば、オホーツク海の豊かな生態系が破壊されます。

利益優先の石油企業

 「国際生物多様性年」の今年、生息環境の保全が強調されるなかで、絶滅が危ぐされたブラウンペリカンの油まみれの姿が衝撃を与えています。油膜は、漁業が盛んなルイジアナ州沿岸を覆い、観光地のフロリダ州沿岸にも迫っています。原油が海中に滞留している可能性も指摘され、深海の生態系の被害も懸念されます。

 原油の流出量は1日あたりドラム缶1万5000本にものぼり、一刻も早く食い止めねばなりません。ふたをかぶせ海上で原油を回収する作業が行われています。しかし、食い止めるには油田に第2、第3の掘削を進めるほかなく、なお数カ月を要するといいます。

 事故の背景に、石油大企業の利益優先の姿勢が浮かび上がっています。流出の原因となった海上掘削基地の爆発・崩壊は、採掘権をもつ英BP社が基地の移動にあたって安全を軽視したためとの見方が出ています。深海での事故に対処する十分な技術も備えもありませんでした。議会公聴会では、BPと基地の所有企業、建設企業の3社とも責任回避に終始しました。復旧や補償の責任を負うBPは、被害総額さえ不明なのに配当を予定し、批判を浴びています。

 事故はオバマ政権も揺さぶっています。中間選挙に向けて政権へのダメージは避けられず、内政の最重要課題になっています。オバマ大統領は外交日程も変更し、現地に3度足を運びました。それでも、流出食い止めは企業に頼るしかないのが実情です。

 オバマ政権は経済成長を重視するとして、石油採掘を拡大しようとしています。オバマ大統領の新エネルギー政策は、ブッシュ前政権の政策を踏襲して、メキシコ湾など米周辺海域での石油や天然ガスの採掘拡大を柱にしています。メキシコ湾での開発はすでに深海へと広がっており、新政策はその動きを加速するものです。

 オバマ大統領がこの新政策を発表したのは、事故発生のわずか20日前でした。事故を受けて、オバマ政権は深海での油田開発を当面見合わせています。

徹底的な検証を

 米国民の目には、深海での採掘拡大の危険性が日々焼き付いています。採掘への規制や監督が不十分で、当局と石油産業とのあいだに癒着があったとも指摘されています。エネルギー政策は大幅見直しが避けられません。

 海洋採掘の安全性について、徹底的な検証が必要です。安全性が疑われる開発はやめるべきです。事故は石油に依存する米社会のあり方にも厳しい反省を迫っています。地球温暖化対策の必要からも、石油に依存したエネルギー構造の転換が不可欠です。





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