2010年6月5日(土)「しんぶん赤旗」
主張
新首相指名
表紙変えても不信は消えない
国民の期待に背き、公約を裏切って怒りに包囲され、辞任に追い込まれた鳩山由紀夫氏に代わって、菅直人氏が民主党の新しい代表に選ばれ、民主、国民新の賛成で次の首相に指名されました。
菅氏は鳩山政権で副総理を務めた、文字通り鳩山政権の“共同責任者”です。菅氏が首相に就任しても、米軍普天間基地を公約に違反して沖縄県内に「移設」する日米「合意」をつづけ、鳩山氏や小沢一郎前幹事長らの「政治とカネ」の疑惑がそのままでは、国民の不信を解消できません。
民主党政権の共同責任
鳩山氏を辞任に追い込んだ問題は鳩山氏だけの責任に帰せられるものではありません。菅氏を含む民主党全体の責任が問われます。
普天間基地の問題をめぐって鳩山氏は昨年の総選挙中、「国外、最低でも県外」と約束しましたが、発言は民主党代表としてで、民主党全体が実行の責任を負っていることは明らかです。にもかかわらず、鳩山政権はその公約に違反して名護市辺野古への「移設」をアメリカに約束し、それを受け、閣僚が署名した閣議決定で県内「移設」を決めました。副総理としてその決定に署名した菅氏の責任は、きわめて重大です。
日米「合意」は、鳩山氏が辞任したからといってなくなりません。現にアメリカ政府は「合意は次期政権でも維持される」との発言を重ねています。菅氏は代表選出馬にあたって「日米合意を踏まえる」と明言していますが、そうした立場に立つ限り、国民に公約違反を批判され続けるのは明白です。
「政治とカネ」の問題でも鳩山氏は、自分や小沢氏が辞めれば「クリーンな民主党」に戻るといいますが、自らの疑惑も小沢氏の疑惑も解明せず、政治的道義的責任を明確にしないで、「クリーン」になどなれるはずはありません。責任は自ら疑惑解明の責任を果たしてこなかった鳩山氏や小沢氏だけでなく、党としても調査せず、自浄力を発揮してこなかった民主党全体に問われています。
菅氏は、鳩山氏に対しても小沢氏に対しても疑惑解明の責任を果たすよういさめたことさえありません。政権の実力者として民主党が自浄能力を欠いてきたことへの責任も問われる立場です。いくら菅氏が小沢氏との「距離感」を演出しようとも、国民の不信を解消するには程遠いものがあります。
見過ごせないのは菅氏自身、消費税問題などでは自ら議論の活発化を求め、増税しても景気には影響しないとの主張に肩入れするなど、消費税は増税しないという民主党の公約に反する議論を牽引(けんいん)する役割を果たしてきたことです。菅氏は民主党代表選への立候補に当たっての政策でも「財政再建」への取り組みを強調し、消費税とは明言しないだけで増税の企てを否定しませんでした。消費税問題での公約への態度が問われます。
もの言えぬ政治のゆがみ
鳩山政権への国民の期待が失望に変わり、ついには怒りを買って辞任に追い詰められたのは、アメリカにも財界にもものを言えない政治のゆがみを抜け出せなかったからです。このゆがみを正す政治が、いよいよ求められます。
新首相に就任した菅氏は来週初めに政権を発足させますが、参院選の前に国会で新内閣の考えをきちんと語ることが不可欠です。