2010年6月5日(土)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
東京の日本民芸館で、「朝鮮陶磁―柳宗悦(やなぎむねよし)没後50年記念展」が開催中で、同館所蔵の約270点の逸品が紹介されています▼主に17世紀末から19世紀後半にかけてのものです。朝鮮の民衆が使用していた一つひとつの陶磁器は、深い味わいを放ち、器を使用した人びとの息遣いを感じ取ろうと、たたずんでいる人も多い▼「韓国併合」がなされた1910年に人道主義を標榜(ひょうぼう)した雑誌『白樺』が創刊。その若き同人として出発した柳宗悦は、朝鮮陶磁の美しさに魅了され、それを通して朝鮮の人々への敬愛を深くしていきます▼19年、朝鮮で3・1独立運動がおき、日本は血なまぐさい弾圧で応えました。そのとき柳宗悦は「独立が彼等の理想となるのは必然」と公然と朝鮮の人びとの側に立ったのでした。その後柳は日本人の一人として、日本の不正の罪を謝したいと書き、以後弾圧を恐れず朝鮮との交流をおしすすめたのでした▼柳が収集した展示品には、そうした朝鮮への揺るがない思いがこめられています。「韓国併合」のとき、石川啄木は「地図の上/朝鮮国にくろぐろと/墨をぬりつつ秋風を聴く」と書き、「併合」を批判しましたが、同じ年の大逆事件によって言論の自由は抑圧され、9年後の独立運動弾圧に抗議の声をあげたのは柳などごく少数▼22年、創立した日本共産党は、朝鮮の解放を堂々と掲げました。啄木、柳らの思いは共産党の立党の精神に受け継がれています。「韓国併合」100年の年に思うこと多々です。