2010年6月3日(木)「しんぶん赤旗」
主張
鳩山首相辞意表明
辞めればすむ問題ではない
自らの公約に違反して米海兵隊普天間基地の名護市辺野古への「移設」をアメリカと合意して県民・国民から厳しい批判を浴び、社民党の政権離脱も招いた鳩山由紀夫首相が、ついに辞任することになりました。鳩山首相は辞意表明のなかで、「政治とカネ」の問題でも国民から批判されたことを、辞任の理由にあげました。
昨年の総選挙で普天間基地の「国外、最低でも県外」への移設を明言し、「政権交代」を訴えた鳩山首相の公約違反は、民主主義の根幹を踏みにじる重大な裏切りです。国民の信頼を失った鳩山氏が辞任するのは、至極当然です。
国民世論に追い詰められ
鳩山首相が県民・国民の再三の反対を押し切って、普天間基地の県内「移設」をアメリカと「合意」していらい、県民・国民の怒りは文字通り沸騰しています。公約が裏切られた沖縄でも、一部の訓練を移転するとされた鹿児島県の徳之島でも、怒りの火にいっそう油を注ぐ結果となっています。
日米「合意」後実施されたどのマスメディアの世論調査でも、内閣支持率は軒並み20%を割り込む危機的な状況です。首相の公約違反を批判し、辞任を求める声も6割、7割に達しました。鳩山首相は辞意表明のなかで、「国民が聞く耳を持ってくれなくなった」と嘆きました。直前まで「続投」に固執していた首相の辞意表明が、こうした国民の世論に追い詰められた結果であるのは明らかです。
見過ごせないのは、鳩山首相が辞意表明のなかでも、普天間基地問題で「迷惑をかけた」というだけで、県内「移設」の日米「合意」そのものについては不可欠だったといいはり、「合意」にもとづき「移設」を進める立場を繰り返したことです。これでは首相の公約違反の責任を問う国民世論にも、普天間基地の無条件返還を求める県民の声にも、応えていません。
首相が自ら辞任すれば、「国民が新しい政権の声に耳を傾けるようになる」などというのは開き直りそのものです。首相の辞任にとどめず、県内「移設」の日米「合意」を撤回させる国民・県民のたたかいがいよいよ重要になります。
「政治とカネ」の問題でも首相は小沢一郎幹事長らとともに辞任する意向は示しましたが、自ら巨額の政治資金の届け出を偽った問題でも小沢幹事長の問題でも、疑惑をすべて解明し、企業・団体献金禁止など政治腐敗の根を断つ措置を実施する態度は示しませんでした。「普天間」の問題も「政治とカネ」の問題も、辞めてすむ問題ではありません。鳩山氏が本心から国民の声に応えようと思うなら、公約に違反した政治の根本を正すことこそ後継内閣に求めるべきです。
米・財界にもの言うこと
鳩山首相が政権交代からわずか8カ月あまりで辞任しなければならなかったのは、アメリカと財界・大企業の政治を正す立場をもたず、言うべきことも言わない政治では、結局国民への公約を裏切り、行き詰まらざるをえなくなることを浮き彫りにしています。
昨年の政権交代ではじまった新しい政治の流れをさらに前に進めるには、相手がアメリカでも財界でも、国民の立場にたって堂々とものを言う政治を実現することが不可欠です。目前に迫った参院選での日本共産党の前進が、いよいよ重要になっています。