2010年6月2日(水)「しんぶん赤旗」
主張
支援船攻撃
国際社会の願いに背く蛮行
イスラエル軍が、パレスチナ自治区ガザに医薬品などの人道支援物資を運び込もうとしていた民間の国際支援団体の船団を急襲し、多数の死傷者を出しました。イスラエルの行動には、アラブ諸国をはじめ世界から厳しい非難が向けられています。支援船団の多くの活動家の出身国であるトルコは、政府がイスラエルの行動を「国家テロ」と非難し、市民が抗議集会を開くなど、イスラエルに対する強い反発が起きています。
国連安全保障理事会もトルコなどの要請によって緊急会合を開き、人命が失われたことを非難する議長声明を採択しました。
封鎖続くガザ
イスラエルは、同国が危険視するイスラム活動家が関与しているなどとして、支援団体の活動をイスラエルの安全保障を危うくするものと主張し、船団襲撃を正当化しています。民間団体の船団を海軍特殊部隊が夜陰にまぎれて急襲し、武器を使用するという異常な行為も、そうしたイスラエルの姿勢を反映しています。
事実関係の究明は不可欠ですが、公海上の民間船舶を攻撃し、活動家に少なくとも9人の死者を出したイスラエルの行為は決して許されません。イスラエルは今回の行為の責任を明らかにし、国際社会の納得を得られる解決をはかるべきです。そのためにも、国際社会はイスラエルへの明確な抗議を表明する必要があります。
支援団体の6隻の船には医薬品や資材、文房具など1万トンにのぼる生活物資が積まれていました。イスラエルは2007年以来、ガザを封鎖し、物資搬入を阻止しており、住民は生活物資が入手できない状態が続いています。
イスラエルは08年12月〜09年1月、ガザに大規模攻撃を行い、死者1400人、負傷者5000人以上を出すとともに、家屋や病院などの施設も多数破壊しました。しかし、ガザでは復旧が進まず、国連の最近の調査でも、破壊された施設の4分の3がなお修復されないままです。イスラエルによる封鎖のために、資材がまったく不足しているからです。
ガザ地区はもともと人口密度がきわめて高く、貧困が深刻です。封鎖は住民に耐え難い苦難をもたらしており、国連をはじめ国際社会も深刻な人権問題だと受け止め、イスラエルに対して封鎖の解除を要求してきています。
イスラエル軍による支援団体への攻撃は、国際社会の意思に反して封鎖の解除を拒否し続けるイスラエルの姿勢を改めて鮮明にしたものです。イスラエル軍による今回の事件の解決とともに、ガザ地区に対する封鎖を即時解除させることが不可欠です。
和平交渉に障害
中東問題の解決は、パレスチナの独立国家創設とイスラエルとの共存なしには望めません。
イスラエルのネタニヤフ政権は、東エルサレムでの入植地の拡大など、国際世論に反して、和平への障害を作り出してきました。イスラエルの今回の行動も、再開に動き出していたパレスチナ自治政府とイスラエルとの米国を介した間接和平交渉に重大な障害となることは明らかです。
和平に反する行為をやめ、パレスチナ国家との共存をめざすことこそ、イスラエルにとっても真の安全保障につながる道です。