2010年6月1日(火)「しんぶん赤旗」

主張

異常国会

強権的運営は国会の自殺行為


 6月16日までの通常国会の会期末を控え、強行採決を繰り返す運営の異常ぶりが際立っています。

 鳩山由紀夫政権与党の民主党や国民新党が先週末、衆院総務委員会でのわずか6時間余の審議で、郵政「改革」法案の採決を強行しました。そのうえ週明けの衆院本会議では、野党の抗議を振り切って郵政法案を採決、参院に送付しようとするのですから、ほとんど審議しない態度です。与党は郵政法案だけでなく、抜け穴だらけの労働者派遣法改定案や「地域主権改革」関連法案などについても成立を急いでいます。強権的運営は、国会の自殺行為そのものです。

審議すべきは審議せず

 与党が成立を急ぐ郵政法案も、派遣法改定などの法案も、本来、時間をかけた徹底した審議こそが求められる重要法案です。

 郵政法案は、自公連立の小泉純一郎政権が強行した、郵政民営化を見直すための法案です。郵政民営化によって郵政事業が劣化し、サービスが低下したことは明白な事実です。しかし、その見直しをどんな内容にするかは、徹底した議論が不可欠です。

 政府案は、郵便、貯金、簡易保険の3事業一体経営を破壊した利益優先の株式会社化を根本的に改めず、郵便を親会社、郵貯と簡保を子会社として金融でも全国一律のサービスをおこなうとしていますが、その保証はありません。郵貯や簡保をどう位置づけるかを含め、徹底した議論が必要です。

 鳩山政権の与党は、先週末28日の委員会で法案の趣旨説明をした後、わずか6時間の審議で採決を強行しました。野党が求めた差し戻しの審議も認めません。まったくの審議無視です。政府・与党が郵政法案の成立を急ぐのは、小沢一郎・民主党幹事長の、特定郵便局長などへの約束を果たすためといわれています。参院選での支持獲得のために審議を形骸(けいがい)化させるなど、断じて許されません。

 政府・与党が今週中に衆院を通過させるという労働者派遣法改定案も、製造業での派遣禁止では「常用型」を、登録型派遣の禁止では「専門業務」を「例外」としているなど、大穴が指摘されています。「派遣切り」にあった労働者からも役に立たないと批判されています。政府案の成立を急ぐのではなく、派遣労働者の声を聞くことを含め、徹底審議が不可欠です。

 見過ごせないのは、政府・与党が法案の成立を急ぐ一方、この国会で当初から問題になってきた鳩山首相や小沢氏の「政治とカネ」の疑惑、米軍普天間基地の撤去問題、口蹄(こうてい)疫など国民の暮らしと営業にかかわる問題などについては野党が要求した集中審議や証人喚問などを拒否し続けていることです。審議すべき問題を審議せず、急ぐべきでない法案の採決を強行する態度は、絶対に認められません。

参院選の前だからこそ

 今度の通常国会は、鳩山政権のもとでの最初の通常国会であるとともに、直後に参院選がおこなわれる大切な論戦の場です。それだけに、国政の焦点となる重要課題について徹底した審議をおこない、問題点を明らかにすることが、国民の審判にとっても大切です。

 「普天間」問題では鳩山政権が名護市辺野古への「移設」を決め、それを受けて社民党が連立を離脱しました。国政の焦点課題での徹底審議が、いよいよ求められます。





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