2010年5月30日(日)「しんぶん赤旗」
主張
NPT再検討会議
核廃絶への前進の土台として
国連本部で開かれた核不拡散条約(NPT)再検討会議が、行動計画を盛り込んだ最終文書を全会一致で採択して閉幕しました。
会議は、「核兵器のない世界」の実現が世界の圧倒的な世論であり、国際社会にとって後戻りできない切実な課題であることを鮮明にしました。核兵器保有国による激しい巻き返しで、核廃絶に向けた国際交渉開始の合意こそ決められなかったものの、廃絶に向けた運動の土台となるものです。
流れの転換明らか
最終文書は、2000年の再検討会議で示された核兵器保有国による廃絶への「明確な約束」を再確認しました。05年の前回会議がブッシュ米政権の妨害で失敗したことを踏まえたものですが、後退を取り戻したにとどまらず、「核兵器のない世界」に向けた前進の土台を築きました。64項目にわたる行動計画はその第1で、加盟国が「核兵器のない世界を達成するとの目標に完全に合致する政策をとる」と宣言しています。
会議は、核兵器廃絶に向けた実質的な前進、とりわけそのための国際交渉の開始を求める世論の強さを示しました。文書は、核廃絶を「法的枠組みのもとで追求すべきだ」とし、それに「大多数の国は一定の時間枠を設定すべきだと考えている」と確認しています。
会議の流れは、廃絶に向けた「行程表」の作成をはじめ行動の時間枠を具体的に設けようとするものでした。最終文書までにいくつもの草案が作成されました。「行程表」を作成する会議を開催する計画は当初案からずっと維持されながら、全会一致の原則の下、核保有国の賛成をとりつけるために最後の段階で放棄されたのです。攻勢に立ったのが非同盟諸国をはじめ核兵器廃絶を迫る勢力であり、核兵器に固執する勢力が孤立していたことは明らかです。
不拡散条約は、米ロ英仏中の核兵器国だけに核兵器の独占を認めた不平等条約です。1970年発効の条約はもともと、核兵器問題は保有国が決めるとの力関係に立つものでした。それが今回会議では、条約は(1)核軍縮(2)不拡散(3)原子力の平和利用の3本柱からなり、(1)は保有国に「自らの核を廃絶する」責任を課しているとの理解が当然のものとなっています。
手を縛られたくない核保有国は、必死の巻き返しで行動への時間枠設定こそさせなかったものの、廃絶に向けた「努力」を迫られています。「努力」は14年の準備委員会に報告され、その上に立って、15年の次期再検討会議で「次の諸措置を検討する」と、猶予を与えた格好です。
廃絶の国際協定を
核軍拡競争を主導してきた米国が「核兵器のない世界」を求める立場に転じたことは、「(自分が)生きているうちには(実現は)無理だろう」というオバマ米大統領の思惑も超えて、核兵器廃絶に向けた交渉への国際政治の流れをつくりだしています。
日本共産党は訪米団を派遣し、世界の反核勢力とともに会議の成功を働きかけました。
今回の再検討会議は、核兵器廃絶の国際協定の交渉に期限を切って踏み出す必要を改めて浮き彫りにしています。次回会議での前進を保障するためにも、国連総会をはじめあらゆる機会で、廃絶への世論を示すことが重要です。
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