2010年5月29日(土)「しんぶん赤旗」
民意は覆せない
辺野古「移設」 日米共同発表
鳩山政権の転落はとどまることをしらない―。28日に発表された沖縄・米海兵隊普天間基地「移設」に関する日米共同発表を一読して、そう感ぜざるを得ませんでした。
米国のどう喝に
民主党政権が誕生した背景の一つは、戦後60年以上続いた対米追随の自民党政治に有権者がノーを突きつけたからでした。そうした有権者の動向を民主党なりにとらえて、「対等で緊密な日米関係を築く」「普天間基地を国外、最低でも沖縄県外に」と公約したのでした。
しかし、昨年10月下旬に来日したゲーツ米国防長官の「辺野古に基地をつくらなければ土地は返さない」との、使い古されたどう喝外交で民主党政権は簡単に方針転換しました。
「現行案(辺野古沿岸部の埋め立て)の正しさを最初に北沢さん(防衛相)、岡田さん(外相)が学習し、次に平野さん(官房長官)、最後に首相が学習している最中だ」
防衛省関係者の言葉通り、首相は「沖縄の海兵隊の機能の一部だけを移転することは事実上、不可能」(5月27日)だと“学習”し、ついに普天間基地「移設先」として、自公政権と同様、沖縄県名護市の辺野古にたどり着きました。
自らの公約を投げ捨てたばかりか、「県内移設反対」という沖縄県民の総意をここまで踏みつけにするのか―「裏切りだ」という声があがるのは当然です。
しかも、共同発表では、在沖縄米軍の訓練の本土へのさらなる拡大や、「環境」を口実にした米軍「思いやり予算」の費目追加、そして島ぐるみで普天間「移設」に反対する鹿児島県徳之島への「適切な施設」の整備=米軍基地建設の検討まで盛り込み、いっそう米側に有利となっています。財源はすべて、日本国民の税金です。
「抑止力」の名で
沖縄県や全国に基地負担を押し付けるための合理化論として、首相が繰り返すのが「海兵隊=抑止力」論です。
しかし、現時点での海兵隊の主任務はアフガニスタンでの「対テロ」戦争であり、他国との訓練などで年間の半分以上、海外展開しているのが実態です。
27日の全国知事会議でも「首相の説明では、海兵隊が抑止力としてどう役立っているのか、明らかではない」(新潟県・泉田裕彦知事)との疑問が出されました。
共同文書で名指しされた沖縄県、鹿児島県では日米合意反対の声がわき起こっています。いくら日米共同発表という「紙」を出しても、民意はくつがえせないし、民意を無視した日米合意を許さないでしょう。(竹下岳)