2010年5月28日(金)「しんぶん赤旗」

主張

暴力団観戦

相撲界は癒着の温床一掃せよ


 土俵をとりまく暴力団の面々―大相撲ファンでなくてもぞっとするような光景です。それが現実に起きていたことが分かりました。昨年夏の名古屋場所で、土俵下の「たまり席(砂かぶり)」で多数の暴力団幹部や関係者が観戦していました。しかも2人の親方のあっせんによるものです。

根の深い問題

 問題になった「たまり席」は、日本相撲協会に高額の寄付金を納め、理事会の承認をえた「維持員」と呼ばれる個人・団体用の特別席です。基本的に「維持員」以外の利用は認めていないといいます。力士の表情や息づかいさえ感じられ、相撲好きには垂涎(すいぜん)の的ですが、それが暴力団に渡っていたとはあきれはてます。

 日本相撲協会は昨年10月「維持員」にかんする規定を改正し、「暴力団その他反社会的勢力団体、構成員またはその関係者」らを排除すると明記しました。その中での発覚だけに、ことは重大です。

 2人の親方は「知人」などに頼まれて席をあっせんしたことは認めましたが、暴力団関係者に渡るとは知らなかったと言い訳しています。

 相撲協会は27日に理事会を開き、関与した親方を降格・けん責処分としました。しかし事実関係の究明さえ尽くされておらず、それですむ問題ではありません。

 相撲界と暴力団との癒着は、これまでもたびたび指摘されてきました。「維持員席」での暴力団観戦は、名古屋場所にとどまらないことも判明しています。

 先場所中には、大関琴光喜の、野球賭博に絡む暴力団とのトラブル疑惑が一部週刊誌に報じられ、琴光喜自身が警視庁に事情聴取されています。また過去には、相撲界トップの横綱が暴力団関係者から懸賞金を受けとり、何人かの力士が暴力団関係者と会食していたことも発覚しています。

 問題の根は深刻です。大相撲の地方巡業をはじめとする興行イベントには、以前から勧進元に暴力団が入り込んでいました。「タニマチ」といわれるひいき客や力士の個人後援会にも黒い影が忍び寄っていました。協会は関与を断ち切ろうと、地方巡業を自主興行に切り替え、親方や力士、関係者に接触をもたないよう指導してきましたが、いまだに根絶できていないことを事態が証明しています。

 公的な団体で多くのファンに支えられている相撲界と、反社会的な団体との癒着は絶対に許されることではありません。このさい徹底して癒着の温床にメスをいれ、相撲界はあげてその一掃に全力を尽くすべきです。

自浄努力の土俵際

 それにしても大相撲は不祥事つづきです。力士の暴行死、大麻所持、暴行問題による横綱の引退、そして今回の暴力団観戦―。これでは、組織のたがが外れているといわれても仕方がないでしょう。

 日本の伝統文化、スポーツとして親しまれてきた大相撲ですが、このままでは国民から愛想をつかされ、ファン離れも進むだけです。

 大相撲は、関係者みずからが運営してきた組織ですが、その半面、閉鎖社会におちいる弱さをかかえています。相次ぐ不祥事を前に、協会が自浄能力を発揮し、親方・力士をはじめ関係者全員が体質改善に一致団結してとりくむかどうか、まさに土俵際の状態です。





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