2010年5月27日(木)「しんぶん赤旗」
主張
米軍機爆音被害
自衛隊空域の使用やめさせよ
米軍機による理不尽な飛行訓練に対する国民の怒りが広がっています。
群馬県では、前橋市などの上空に設定された自衛隊訓練空域のなかで米軍機がすさまじい飛行訓練をくりかえし、そのため県民が爆音被害で苦しみ続けています。この責任が自衛隊のために設定されている訓練空域を米軍機に勝手放題に使わせている政府にあるのは明らかです。日本共産党の井上哲士参院議員は国会で、米軍機による自衛隊訓練空域の使用をやめさせるよう求めました。それは飛行訓練による爆音被害から県民を守るために不可欠です。
建物めがけて急降下
前橋市や渋川市などの上空には地表から3千メートル程度の低高度・試験空域とそれと一部重なる形で高高度訓練空域が設定されています。自衛隊用として設定されているのに、自衛隊がこの訓練空域を何の条件もつけずに米軍機に使わせていることが爆音で県民が苦しむ原因となっているのです。
米軍の横須賀基地(神奈川県)を母港とする空母ジョージ・ワシントンの艦載機がこの自衛隊訓練空域を使って、敵地侵入や地上攻撃などを想定した低空飛行をくりかえしています。数機で飛来してきては縦横に旋回し、建物めがけて急降下する低空飛行が住民に恐怖を与えています。昼間だけでなく夜もくりかえされるため家族だんらんの楽しみさえ奪っています。
ことし1月から5月12日までに群馬県や自治体に寄せられた苦情は570件をこえるほどです。日本国憲法は国民が平和的に生存する権利を保障しています。政府が自衛隊訓練空域を米軍機に「又(また)貸し」し、低空飛行訓練を保証し、国民の平和的生存権をおびやかすことは、絶対に許されません。
自衛隊の訓練空域を米軍機に「又貸し」するのは重大です。もともと米軍機は世界各地での戦争に備えて、実戦的で危険な訓練を行っています。そのため、米軍機用の訓練空域は海の上空に設定され、陸上の上空にはありません。にもかかわらず防衛省は、自衛隊の訓練空域を米軍機に「又貸し」することを認め、危険な訓練を米軍機に保証しているのです。
しかも、防衛省は米軍機に自衛隊訓練空域の使用を認めておきながら、県民を苦しめている人口密集地での超低空飛行については「承知していない」という無責任な態度に終始しています。「自衛隊の戦闘機による訓練は行われていない」(4月8日参院外交防衛委員会、長島昭久防衛政務官)のに、米軍機には危険な飛行訓練を許すのは、対米従属の異常がむきだしになっている結果です。
低空飛行中止を求めよ
アメリカ国内では、都市上空や住宅地上空での低空飛行訓練そのものが許されていません。群馬県をはじめ全国各地で米軍機が行っている低空飛行訓練は、アメリカ国内では許されない無法行為です。訓練の保証ではなく、低空飛行訓練をやめよとアメリカにいうのが主権国家のあるべき態度です。
全国各地で国民は米軍機の爆音被害で苦しんでいます。この事実から目をそむけず、アメリカに中止を求めることこそ、国民に対する政府の義務です。アメリカにモノをいう政治を実現することが、国民の命と安全を守るうえでもいよいよ重要です。
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