2010年5月26日(水)「しんぶん赤旗」
辺野古に新基地
社民 共同責任免れず
米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「移設」問題で鳩山由紀夫首相が、名護市の「辺野古の付近に」と新基地建設を正式に表明し、クリントン米国務長官も大歓迎しています。これは、民主党が総選挙で掲げた公約の明白な違反であり、裏切り行為です。同時に、同党と連立を組む与党・社民党の立場も問われています。
鳩山首相は23日、辺野古付近に普天間基地を「移設」する「結論に至った」と、沖縄県や名護市など関係自治体や経済界に表明しました。これは政権としての「結論」であり、連立を構成する社民党、国民新党も共同責任を免れません。福島瑞穂党首(消費者・少子化担当相)は社民党として「県外・国外移設を主張している」とか、「政権内部で言い続ける」などとさかんに言いますが、政権としての「結論」の前では通用するものではありません。
福島党首は25日には閣議後、急きょ、沖縄を訪問し、知事と意見交換し、社民党の主張を述べたようですが、それで責任が免罪されるわけではありません。
迷走・逆走
米軍普天間基地問題をめぐる経過を見ても、社民党の対応は迷走・逆走しています。
社民党は2009年の総選挙で、米軍普天間基地の「閉鎖・返還」を主張し、辺野古への新基地建設に反対する公約を掲げていました。ところが、3党連立政権の政策合意(昨年9月9日)に向けて変節を開始しました。
同党の阿部知子政審会長が普天間基地問題で「連立を可能にしたいとの前提だから、なるべく協調できるようにした」(昨年9月3日)と記者団に述べたとおり、米軍普天間基地の「閉鎖・返還」という総選挙公約を投げ捨てました。
それどころか、社民党は、「日米同盟の強化に反対」という自らの公約も投げ捨て、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と、あいまいな表現の3党合意文書を作成。鳩山政権が今、「3党合意の中の枠でやっている」(平野博文官房長官)と、県民の声を無視して新基地を押しつけるおぜん立てづくりに協力したのです。
弁解しても
社民党は米軍普天間基地をグアム島やテニアン島へ「国外移設」する案を主張しています。しかし、日本近現代思想史研究者の鹿野政直氏は、「グアム・テニアンについても、国家の壁を超えて、その他の人びとの自己決定権の無視に想到する域に達している」(「朝日」24日付)と批判しています。
普天間基地問題をめぐって福島党首がどのような言動をとろうとも、普天間基地問題を逆走させた共同責任から絶対に免れることはできません。与党としての共同責任にはほおかむりしながら、「県外・国外移設」を口にするのは欺まんにほかなりません。(松田繁郎)