2010年5月25日(火)「しんぶん赤旗」

主張

野中氏機密費証言

世論の買収を究明すべきだ


 自民党の元幹事長で、官房長官などを歴任した野中広務氏が、官房機密費が与党の政治家などのほか、「言論活動で立派な評論をしておられる人」にも、「盆暮れのお届け」として配られていたことを証言して波紋を呼んでいます。

 野中氏は具体的に機密費を配った相手は明らかにしていませんが、一部のマスメディアの追及で、何人かの「評論家」が受け渡しを認めています。事態は国民の税金で政府に都合がよいよう、世論が操作・買収されていたのではないかという問題であり、事実は徹底して究明される必要があります。

領収書の要らない支出

 野中氏の証言は先月の民放テレビの番組やその後の講演でおこなわれ、最近も一部の新聞や週刊誌が取り上げました。野中氏が官房長官を務めた1998年7月から翌年にかけ、首相官邸の機密費を首相や自民党の国対委員長のほか、「言論活動で立派な評論をしておられる人」にも配ったというものです。野中氏は、機密費をどこに配るかの「引き継ぎ帳」があったことも明らかにしています。

 首相官邸や外務省の予算に「報償費」などの名目に計上されている機密費が、領収書が要らず支出先も公開されない秘密の財源となっており、与党の国会対策や世論操作などに使われた疑いがあることは、再三指摘されてきました。

 日本共産党がかつて国会で暴露、追及した「報償費について」という内閣の用箋(せん)に書かれた文書は、外交機密費の官邸への上納が制度的におこなわれていたことや、88、89年度の消費税導入の際、「新税制の円滑実施等」のため、機密費が大幅に上積みされたことを示していました。また、機密費の支出を官房長官側が記録したとみられる「金銭出納帳」には、野党議員の「背広代」などの項目で、国会対策や外遊のせんべつとみられる支出が書き込まれていました。

 こうした機密費の実態についてはこれまでも官房長官経験者などが言及したことがありますが、今回の野中氏の発言は、自民党の実力者として知りぬいた人物の発言だけに、ことは重大です。しかも野中氏が、機密費を配った相手として「評論家」をあげたことは、政府による世論操作を浮き彫りにするものとして、絶対に見過ごすことができないものです。

 マスメディアに登場する「評論家」の多くは、新聞やテレビで自らも取材に携わったことのある報道関係者です。そうした人物が政府から機密費で「付け届け」を受け取ること自体、権力を監視するジャーナリストの自殺行為です。野中氏の証言が事実かどうか、出した側も受け取った側もあいまいにすますことは許されません。

機密費の実態公開せよ

 自公政権から民主党の政権に代わっても、巨額の機密費が国民に実態を明らかにすることなく支出されていることは、なんら変わっていません。平野博文官房長官は機密費の支出は認めましたが、再三の追及にも実態は明らかにしていません。

 野中氏の発言があってもなんら機密費の実態を明らかにしないなら、政府の世論操作に対する現政権の姿勢が問われます。闇に包まれた機密費の実態を明らかにすることは、鳩山由紀夫政権にとって不可欠です。





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