2010年5月24日(月)「しんぶん赤旗」
タイ 平穏と不透明
タクシン派 活動再開の動き
政府は支持者離反図る
デモ隊と治安部隊とが衝突し、多数の死傷者を出す事態にいたったタイの首都バンコク。タクシン元首相支持派の反政府デモは、19日の強制排除で終結し、デモ隊の幹部団は拘束され、支持者は故郷へと帰りました。しかしタクシン派からは早くも活動再開の動きが出ており、不透明な情勢が続きそうです。(バンコク=井上歩 写真も)
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バンコク中心部、タクシン派「反独裁民主統一戦線」(UDD)が占拠していた地区は23日も治安部隊が立ち入りを制限、当局が集会メーンステージの撤去や清掃を実施しました。
しかし放火や銃撃はなく、首都は平穏を取り戻しています。高架鉄道や地下鉄は同日、運転を再開しました。
タイのメディアによると、タクシン派の大物・ジャトゥロン元タイ愛国党党首代行は22日、治安部隊の実力行使で追い込まれたタクシン派支持者が地下活動を始める可能性があると述べました。
ジャトゥロン氏は、地下活動の存在によって「政治抗争が激化し、さらに危機的な状況を招きかねない」とも述べました。
UDDの地区リーダーの一人は本紙に、「支持者は、指導者の指示を待っている人たちと、自らグループをつくって地下活動をする人たちに分かれてきている」と話しました。
UDD若手幹部は23日までに、タクシン派各グループが新たに「民主主義評議会」を結成し、来月から集会活動を再開すると表明。UDDと決別していたタクシン派の別グループ「赤いシャム」も、非常事態宣言解除後に数千人規模の集会を開くとしています。
一方の政府は22日、UDDが占拠していた地区で、手りゅう弾やライフル銃など大量の武器を発見したと発表。タクシン派からの支持者離反を図っています。
旧占拠地区の映画館職員(40)は、強制排除と暴動があった19日、2人のUDD自警団員が手りゅう弾を所持しているのを目撃したと話しました。他方、デモの一般参加者は基本的に非武装だったことが、多くのメディア関係者に確認されています。
政府の集計によると、UDDがデモを始めた3月半ば以降の死者は85人(うち民間人74人)、負傷者は1400人とも1900人ともいわれます。約1200世帯を対象にした私立大学の調査では97%がタイ人同士の衝突に「悲しい」と回答。96%が国民和解を支持しました。政府の国民和解案は75%が支持したとされます。