2010年5月22日(土)「しんぶん赤旗」

主張

「普天間」日米合意案

民意を破壊する最悪の行為だ


 米海兵隊普天間基地の沖縄県内「移設」を強行するため、鳩山由紀夫政権が今月末、共同声明など日米の「合意」文書を発表する動きを浮上させています。鳩山首相や岡田克也外相が21日会談したクリントン米国務長官にも、協力を要請したとみられます。

 沖縄県民は普天間基地の即時・無条件撤去を要求し、県内「移設」に反対しています。そうした県民の意思を、日米合意をたてにおさえ込むなど、言語道断の極みです。日米合意を優先させるやり方はやめ、無条件撤去を求める県民の声に応えるべきです。

怒りの火にさらに油

 普天間問題についての日米「合意」を発表するといっても、県民が拒否している以上、問題解決の見通しが開けるなどということではさらさらなく、ひたすら「5月末決着」を言い続けてきた鳩山政権の、つじつま合わせの色合いが濃いものです。実際、実現の見通しがない「合意」発表に米側も慎重で、北沢俊美防衛相が訪米して事前にゲーツ米国防長官と会談するという構想は、実現できない見通しになっています。

 沖縄県民は、9万人を超す県民と仲井真弘多知事、県内すべての自治体首長らが参加した4月25日の「島ぐるみ」の集会で、普天間基地の閉鎖・撤去、県内「移設」反対の意思をきっぱりと表明しました。その後、鳩山首相が沖縄入りし、仲井真知事らに普天間基地の県内「移設」を要請したのは、県民の怒りの火に油を注ぐことになっただけでした。

 県民の意思が強固で県内「移設」の同意が取り付けられそうにないからといって、米との「合意」を優先し、それで県民の意思をおさえつけようなどというのは絶対通用しません。県民の怒りの火にさらにいっそう油を注ぎこむだけで、いったい鳩山政権はどこの国の国民を代表する政府かと、民主主義の根幹がきびしく問われることになるのは明らかです。

 しかも、鳩山政権が県民の意思を受けて米に普天間基地の無条件撤去を求めるのではなく、米との合意を優先する態度をとっていること自体が、米の要求にずるずる押し込まれ、結局はアメリカいいなりになっているのは重大です。

 鳩山首相が仲井真知事に県内「移設」を要請した際、その内容は自公政権時代の名護市辺野古での埋め立て方式を「修正」した、くい打ち桟橋方式になるといわれていました。ところがこの方式に米が難色を示すと、さっさと引っ込めて埋め立て案に戻す態度に変わってきています。無条件撤去を求めて米と本腰を入れた交渉もしないで、米が気に入るならばとずるずる妥協を重ねるような態度は、直ちに改めるべきです。

自然も人間も冒とく

 もともと鳩山首相の選挙公約は、普天間基地を「国外、最低でも県外」に移し、県民の負担を軽減することでした。県内「移設」を要請し、しかも自公政権と同じ方式での新基地建設を持ち出す首相の公約違反は、とうてい県民の納得を得られるものではありません。

 沖縄の地元紙は首相の態度を「やぶれかぶれの県内移設」と批判します。首相はかつて埋め立て方式での新基地建設を「自然への冒とく」と批判しましたが、首相の態度は、自然だけでなく人間にたいする冒とくそのものです。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp