2010年5月20日(木)「しんぶん赤旗」
核廃絶へ積極提案
問われる保有国の態度
NPT再検討会議 様変わり
ニューヨークの国連本部で開かれている核不拡散条約(NPT)再検討会議は4週間の会期の後半に入りました。核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用をそれぞれ話し合う主要3委員会の議長が個別にまとめた「最終文書」素案には、核廃絶の「行程表」を作ることなど「核兵器のない世界」の実現に向けた積極的な提案も盛り込まれました。実質的な議論ができなかった2005年の再検討会議とは大きく様変わりしています。(ワシントン=西村央、外信部=山崎伸治)
「核軍縮に関する行動計画案で、最も重要で説得力のある内容の一つは、特定の項目に期日を設けたことだ」
ニューヨークで再検討会議を見守る非政府組織(NGO)が連日発行するニュースは、「最終文書」素案の特徴をこう指摘します。
核軍縮を話し合う第1委員会の素案は、提起した26項目の「行動」として、2011年までに核軍縮の具体的進展加速のための交渉を開始すること、14年に核兵器廃絶に向けた行程表(ロードマップ)作りのための国際会議を開くことを盛り込みました。
5年に1度開かれるNPT再検討会議は前々回の2000年、「核兵器の全面廃絶を達成するとの核兵器保有国の明確な約束」をうたった最終文書を採択。しかし05年は、米国のブッシュ前政権が同文書の受け入れを拒否し、なんらの合意もないまま終了しました。
これが「核兵器のない世界」の実現を掲げるオバマ政権の誕生で大きく変わりました。再検討会議の議論にもそのことが反映されています。
一般討論では「あらゆる形態の核兵器を禁止する核兵器条約についての考察を始めるべきだ」(非同盟諸国代表のインドネシア・ナタレガワ外相)、「中、仏、ロ、英、米に対し、条約6条に基づく核軍縮に向けた誓約と義務の順守を求める」(新アジェンダ連合代表のエジプト・バドル国連軍縮大使)と保有国に核軍縮の義務履行を求める発言が続きました。
そしてこの背景にあるのは核兵器廃絶を求める世界の世論です。素案も「各国政府や市民社会からの核兵器のない世界実現に向けた新たな提案を歓迎する」と指摘しました。
一方、核不拡散を議題とする第2委員会の素案は、95年の決議採択以来、実効化の動きのない中東非核地帯構想推進を呼びかけました。
再検討会議は各委員会でそれぞれの素案を議論し、その後一本化、28日の会期末までの最終文書合意をめざします。核廃絶に向けた積極的な提案に対し、どのような態度をとるのかが、特に核保有国にするどく問われています。
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