2010年5月20日(木)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 ちょっと気になった最近の新聞記事。昨年の化粧品の出荷が金額、数ともに減った、といいます▼前年より金額で8%、数で0・2%。1品あたりの価格が下がったそうです。人が毎日使う化粧品は、不況に強い商品といわれてきました。しかし、消費者が安い品へ乗りかえたり買い控えたりしたようです▼思い出した話があります。昨年1月にスイスで開かれた、世界経済フォーラムでのこと。ふだんは着けないネクタイを結び、現れた人がいました。アメリカの情報技術(IT)会社フェイスブックの創業者、ザッカーバーグ氏。20代の半ばで、すでに億万長者▼“なぜネクタイを?”と聞かれ、ザッカーバーグ氏は答えました。「いまは真剣でなくてはいけない時期だから」。やはり不況下、まじめに経営にとりくむ気持ちをネクタイ姿で示した、というのです▼服飾史家の中野香織さんは、ザッカーバーグ氏の逸話を紹介しながら、時代の空気を読み解きます。経済危機の中で「成功」や職を失わないために、“仕事ができる”“信頼できる”といった印象を与えるように装う人たちがふえているようだ、と▼中野さんによれば、「環境」「倫理」を強調する装いも流行しています。金持ちが有機栽培の綿の服や長持ちする服を着る。貧しい人を低賃金で働かせてつくった服を着ない…。中野さんは、2000年代の変化をこう考えます。「資本主義が行き詰まった結果、もたらされたファッション状況ともいえる」(『モードとエロスと資本』)





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