2010年5月20日(木)「しんぶん赤旗」
主張
無人偵察機
海外での「戦争力」強化やめよ
防衛省が今年度5億5千万円をかけて、無人偵察機の導入や運用態勢を検討するための海外調査を実施します。自公政権が103億円投じて開発してきた無人偵察機の実証研究にふみだすことに懸念の声が広がっています。
防衛省は導入目的を「離島防衛」だと説明しています。しかし無人機が海外の戦場で使われない保証はありません。政府が海外での戦争に備えた軍事態勢づくりを加速しているなかで、無人機の導入は周辺諸国との緊張を強めることにもなりかねません。
攻撃作戦の能力強める
無人偵察機は長さが5・2メートル、幅が2・5メートルで、空自のF15戦闘機で運ばれます。偵察活動が必要な場所の上空で切り離されたあとは、機体に組み込まれた地形照合装置を使い、全地球測位システム(GPS)で位置を補正しながら自力で飛行し、地上の状況をリアルタイムで画像のまま空自の司令部に伝送するのが仕事です。さしあたりは偵察が目的ですが、それによって攻撃作戦の能力を強めることにもなります。
無人機の導入は、日本が「戦争のロボット化」を進める国の仲間入りすることを意味します。司令部に陣取ったままで、自軍の犠牲を気にすることなく戦況を把握し、攻撃に備えるものです。無人機導入は「戦争力」の強化であり、許されることではありません。
防衛省は「離島防衛」のために無人機を導入するといっています。しかし「離島防衛」にとどまらず、日本周辺地域の有事をはじめ、アメリカが関与する戦争で活用する狙いもあります。
2005年に日米両政府が合意した米軍再編中間報告は、無人機による「情報、監視、偵察活動」を日米協力の課題にするとうたっています。中間報告は日米同盟をアジア太平洋と世界の安全保障に「適用させる」とのべており、世界的規模で日米軍事一体化が進行中です。
無人機を活用した日米軍事協力が「離島防衛」に限定されるわけがありません。無人偵察機を導入すれば、日本周辺地域のみならず、アメリカがアフガニスタンなどで行っている無人機攻撃の「目」となり、手助けすることにもなりかねません。
無人機を遠距離で使う場合には通信衛星などの利用が欠かせません。防衛省はすでにことし1月、硫黄島で無人機が飛行しながら得た大容量の画像情報を、独立行政法人が開発中の超高速インターネット衛星「きずな」を使って、入間基地に伝送する試験を行いました。遠距離地域での運用を考えているのは明白です。
宇宙の平和利用は国会決議でうたわれている平和原則です。戦争のための衛星利用は平和原則に反します。衛星を使って「戦争力」を強化するのは許されることではありません。
平和原則と両立しない
日本は過去の侵略戦争でアジア諸国民に言語に絶する苦しみを与えました。その教訓から憲法は、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」(前文)しました。
いま日本がやるべきは「戦争力」の強化ではなく、戦争が起きないよう平和外交を強化することです。政府は無人機の実証研究をやめ、導入計画を撤回すべきです。
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