2010年5月17日(月)「しんぶん赤旗」
主張
大企業決算
利益還元させて悪循環を絶て
東証一部上場企業の3月期の決算発表が山を越えました。
新光総合研究所のまとめによると、金融を除く全産業の集計で、減収減益となった前期よりも売上高が落ち込む一方で、経常利益は3割近い増加となっています。
「コスト削減」で増益
業種別に見ると、銀行、証券業を除いて、内需に関連した非製造業の大半が減収減益となっています。これとは対照的に、製造業の加工産業が売上高を1割減らしながら、経常利益を前期の3倍以上に拡大しています。
なかでも自動車など「輸送用機器」は前期比で7・7兆円も売り上げを減らす一方で、2兆円も経常利益を増やしました。「電気機器」も売上高を5・6兆円減らしながら、経常利益を2・2兆円増やしています。
大手製造業が、大幅な減収にもかかわらず利益を急回復させている最大の要因は、下請け単価の引き下げや人件費の削減など「コスト削減」です。
最大手のトヨタグループの場合、前期と比べて売り上げを1・6兆円減らしたのに、当期純利益は6千億円以上増やしました。販売台数の減少とともに円高もマイナスに働きましたが、それを大きく上回る1兆円に迫るコスト削減が利益を押し上げました。
トヨタは日本を代表する企業であり、財界の重鎮でありながら、率先して「非正規切り」に走り、下請け単価の買いたたきを加速させました。労働者と中小企業に一方的に犠牲を転嫁して上げた大もうけです。
トヨタグループは当期純利益の8割以上を株主配当に回し、残りを内部留保に回しました。1株当たり45円を配当し、大手銀行・保険や豊田自動織機など、大株主の上位10社だけで620億円もの配当金を山分けしています。
本当に厳しいときに従業員や下請けを守ってこそ、かけがえのない人材や技能を育て、信頼を生んで、企業の経営基盤もいっそう強くすることができます。賃金と下請け代金を削って目先の利益を増やし、それを株主・大銀行・関連企業にばらまくと同時に巨額の内部留保として蓄える―。トヨタなど大手製造業のやり方は、大企業の社会的責任の面でも、経営戦略の面でも本末転倒というほかありません。深刻な製品欠陥も発生しています。
大企業が、そろってこんな行動を取れば家計はますます苦しくなり、消費は冷え込みます。
全国紙が今月初めに発表した主要企業アンケートでは、景気回復に必要な条件は「個人消費の拡大」だという答えが最も多くなっています。しかし大企業には、みずからの行動が消費低迷の最大の原因となっているという自覚がありません。アンケートでは、人件費抑制策として「採用抑制」や「非正規社員の削減」を挙げる企業が目立っています。
大企業の行動を変えて
目先の利益にとらわれた大企業は、内需の低迷とコスト削減の悪循環に陥っています。
こんな大企業の行動を変えさせない限り、日本経済の健全な成長への道を開くことはできません。
大企業に雇用の社会的責任を果たさせ、中小企業との対等な取引を実現する民主的ルールを作り、巨額の内部留保と利益を社会に還元させる政策が求められます。
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