2010年5月11日(火)「しんぶん赤旗」

主張

ユーロ危機

混乱収拾に踏み出した欧州


 欧州単一通貨ユーロの信用不安が世界の金融市場を揺るがすなか、欧州連合(EU)がユーロ防衛策で合意しました。今回の措置を受けた市場の動向に関心が集まっています。

 ユーロは、見直しが迫られている「ドル基軸通貨体制」への一大対抗軸であり、その不安定化は世界的に影響をもたらします。ユーロを安定させ、市場の混乱を収束させるには、欧州とともに世界の協力が不可欠です。

痛み押しつけに懸念も

 EUは、財政危機を引き起こして混乱の震源地となったギリシャ向けに、国際通貨基金(IMF)との協調融資に踏み出しました。同時に、ユーロ圏諸国の資金難に対処するため、巨額の「欧州安定基金」を創設するなどの措置を決めました。

 EUはこれで混乱を抑え込もうとしています。ただ、今回の決定が市場の混乱に追い込まれた結果だったことからも、それに終止符が打てるかどうかは不透明です。

 ギリシャは財政破たんへの責任はまぬがれません。ギリシャ政府は「国家破産を回避する」(パパンドレウ首相)ため、IMFとの交渉を通じて、公務員給与や年金などの引き下げや付加価値税率の引き上げなどの超緊縮政策を受け入れました。しかし、国民に耐え難い痛みを押し付けるなら、緊縮策の実行も進みません。外部から“煮え湯”を飲ませるのでなく、国民がバランスのとれた自主的選択をすることが不可欠です。

 IMFの処方せんは、労働市場「改革」による経済競争力の「強化」といった構造調整政策も盛り込んでいます。財政不安を抱える国はほかにもあり、同様の政策を求める圧力は強まるでしょう。それが、欧州で長年にわたって培われてきた労働者と国民の権利をまもるルールを崩すことになるなら、反撃が必要になります。

 EUは、混乱に追い込まれ、米国の圧力を受ける前に、連帯の立場でギリシャを支援できなかったものでしょうか? そうならなかったのは、経済大国であるドイツが否定的だったことが一因です。メルケル独首相が重要な地方選挙を控え、国民に不評のギリシャ支援には縛りがありました。

 しかし、市場はその間にギリシャ国債を紙くず扱いし、国債を保有する欧州の金融機関に不信の目を向け、ポルトガルやスペインの財政不安をあおるなど、悪材料を探し回りました。ヘッジファンドなどの投機筋は、ユーロのいっそうの下落を見越して、売り圧力を強めました。

 1990年代後半のアジア通貨危機や2007年からの世界金融危機と同じく、金融市場がふたたび牙をむきました。カジノと化した市場に、世界の経済と国民生活が振り回されています。

 今回の事態は、投機に対する規制強化の必要を明らかにしています。

投機規制の必要明らか

 ユーロ圏首脳会議(7日)の声明は「市場の混乱は、金融市場の規制・監督を急速に進める必要を浮き彫りにしている」として、デリバティブ(金融派生商品)や格付け会社への規制強化をあげ、さらなる措置にも言及しました。

 投機規制を強化する必要は、米国発の世界金融危機を通じても十分に明らかです。今こそ実行に踏み出すべきときです。





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