2010年5月9日(日)「しんぶん赤旗」
「みんなの党」渡辺喜美代表
「資産ゼロ」の不思議
国会議員の資産公開で主要な資産について、「ゼロ」と報告した「みんなの党」代表の渡辺喜美元行革担当相(衆院栃木3区)。しかし、その実態を調べると親族会社を利用して資産を見えにくくする構図が浮かんできました。(「政治とカネ」取材班)
|
昨年の総選挙後、渡辺氏が衆院議長あてに提出した「資産等報告書」(昨年8月30日現在)。土地、建物、預貯金、借入金など「該当なし」が続きます。
「資産ゼロ」といっても、貸付金約3760万円、大手製薬会社の株券68株、普通自動車1台、ゴルフ会員権8口を所有しています。
しかし、自宅など土地・建物の不動産所有はありません。
栃木県那須塩原市のJR西那須野駅からほど近い一角。3000平方メートルを超す敷地に、「渡辺喜美後援会総連合会」の事務所や、「渡辺美智雄経営センター」の事務所などがあります。
同センターは、渡辺氏の父親で、自民党副総裁、蔵相などを歴任した渡辺美智雄氏(故人)の名前を冠した株式会社(資本金1000万円)です。渡辺氏が社長で、同氏の母親も役員という親族会社です。
登記簿によると、土地は、美智雄氏から相続した母親や、美智雄氏の資産管理などを目的にした別の親族会社「和三紫(わさし)」(同5000万円)から、2005年、「売買」で渡辺美智雄経営センターに所有権が移転しています。建物も06年1月に和三紫から同センターに所有権が移転しています。
親族会社の所有という形で、事実上の個人資産が表面化しないようになっています。
渡辺氏の「自宅」として同センターの登記簿役員欄に記載されていたのは、東京都渋谷区松濤の一等地です。
登記簿などによると、約730平方メートルの土地は、富士銀行相談役や経団連評議員会議長を務めた財界人がかつて所有していたもの。1999年10月、東京都中央区の不動産会社役員の関係者が「売買」で取得。2000年3月、同不動産会社役員があらたに設立した不動産会社「共栄エステート」(有限会社、資本金300万円)が01年2月に、2階建て、延べ床面積約250平方メートルの豪邸を2棟新築しました。
このうちの1棟が渡辺氏の自宅です。
共栄エステートは、東京都に不動産取引をするために必要な宅地建物取引業の届け出をしていません。
「親族会社を使った“資産隠し”ではないのか」との本紙の問い合わせに、渡辺事務所は、「資産報告書のとおりです。きちんと報告しております」としました。