2010年5月8日(土)「しんぶん赤旗」
英保守党が第1党
過半数には届かず
総選挙 与党・労働党は敗北
【ロンドン=小玉純一】英総選挙(定数650、単純小選挙区制)が6日、投開票されました。英BBCによれば、7日午前10時(日本時間同日午後6時)現在、野党・保守党が前回(2005年)総選挙比92増の292議席となり、第1党となるのは確実です。ただし過半数の326には届かず、1974年以来のハング・パーラメント(過半数の議席を得た政党が不在)となる見込み。
与党・労働党は87減の251議席で敗北が確定。選挙期間中に支持率を伸ばした野党第2党の自由民主党は52議席にとどまっています。緑の党が初議席を得ました。投票率は約65%でした。
保守党のキャメロン党首は7日未明、「労働党政権は統治の権限を失った」「(英国は)新しい指導者」を求めているとして保守党政権樹立に意欲を表明しました。北アイルランドの地域政党などとの連立の意向だと報じられています。
労働党は自民党との連立を模索すると報じられてきました。しかし両党合わせても過半数は困難。敗北した労働党の政権維持は難しいとみられています。
新議会は18日に招集され議長を選出します。女王演説が予定される25日までには政権の枠組みを決める必要があります。
小選挙区制の不合理
保守党と労働党の合計得票率がまた減りました。今回は65・2%(定数650中598議席確定段階)。今世紀に入り約7ポイント減りました。1950年代には保守党と労働党の合計得票率は9割超。「7割を切ったら二大政党制は機能しない」(フィナンシャル・タイムズ4月27日付)といわれており、小選挙区制が時代に合わないことが改めて示されました。
小選挙区制は死票が多く少数政党に不利な制度。保守党は36%の得票で議席占有率44%となったのに対し、自由民主党は23%の得票で議席占有率は8%弱にすぎませんでした。
自民党はマニフェストで「公平で、より民意を反映する投票方式を導入」すると公約。小選挙区制見直しを強く主張しています。
ガーディアン紙は2日、今回の選挙を小選挙区制で行う「最後の選挙にしたい」として、自民党支持を社説で宣言。インディペンデント紙も「選挙制度改革につながる投票」を呼びかけました。
保守党は現行制度維持の立場ですが、英国内で小選挙区制見直しの主張がさらに強まるのは避けられません。(ロンドン=小玉純一)
二大政党への不信
二大政党への不信を示す選挙でした。
まず労働党の敗北です。「労働党政権は3期で十分」―これが有権者の気持ちでした。コソボ、イラク、アフガニスタンと戦争を続け、貧富の差も縮まりませんでした。
小選挙区制のため、労働党が不振なら楽勝するはずの保守党ですが、過半数に届かない見通しです。
前回総選挙で政権奪取に失敗した保守党は、キャメロン新党首のもと、「中道寄り」に路線を転換。窓口負担無料の公的医療制度(NHS)重視はその象徴でした。支持率で労働党を10ポイント以上引き離し、政権交代確実といわれてきました。
しかし路線転換は「不十分」でした(オブザーバー紙2日付)。サッチャー政権時代(1979―90年)の公共支出削減の前歴もつきまとい、支持が伸び悩みました。
折しも、財政破たんの危機に陥ったギリシャでは、増税や年金カットなど、国民に負担を強いる「財政再建」が国民の批判を浴びています。英国の財政赤字は国内総生産(GDP)比でギリシャに匹敵する12%です。
保守党は6月に補正予算を組み、歳出削減を急ぐと強調しています。少数政権であれ連立政権であれ、キャメロン首班政権がサッチャー時代と同じ姿勢を示すなら、国民の反発は必至です。(ロンドン=小玉純一)