2010年5月8日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 14年5カ月ぶりに運転を再開した高速増殖炉「もんじゅ」の名前は、知恵をつかさどる文殊菩薩(もんじゅぼさつ)からとっています。しかし、もう翌日には意味不明の警報が鳴るなど危なっかしく、賢くはみえません▼70年以上前、3人の俳優が「三人寄れば文殊の知恵」だと文殊会をつくり、演劇の未来を語り合いました。宇野重吉、信欣三(しんきんぞう)、北林谷栄。3人は、プロレタリア演劇運動の流れをくむ新協劇団の団員でした▼宇野・北林はきょうだいのように仲良く、北林さんによれば弾圧の時代の「戦友」でもありました。「日本一のおばあさん役者」北林さんの輝ける青春です。2人は戦後、劇団民芸の創立に加わります▼宇野さん、信さんが逝って22年。北林さんも98歳で亡くなりました。まだ20代の北林さんに老女役ができると見抜いた人も、宇野さんです。ぴたりでした。後の、怪しげな日本語で日本兵と親しくなる「ビルマの竪琴」のおばあさん。警察を手玉に取る「大誘拐」の富豪のおばあさん…▼朝鮮人のおばあさん役は、とくにこだわって演じました。朝鮮民族が歩んできた道のりへの敬意を込めて。銀座の問屋に生まれた北林さんが12歳のとき、関東大震災の混乱に乗じて虐殺された朝鮮人の死体をみました。どんなに悔しかったろうと思い、世の不合理に憤りを覚えました▼80歳に近づき、振り返っています。“12歳のとき覚えた率直なほとばしりを、なえさせてはいないつもり”と。つらい思いの人に代わり演じ続けた、おばあさん役でした。





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