2010年5月8日(土)「しんぶん赤旗」
主張
来年度予算編成
むだの病巣にメスが入らない
参院選を前に、来年度予算の編成、「税制改革」に向けて政府が動きだしています。
鳩山政権が編成した今年度予算は、92兆円の一般会計、44兆円の国債発行、10兆円の税外収入という、いずれも過去最大の異常な内容でした。
まともな経済戦略もなしに予算をばらまく一方で、軍事費と大企業・大資産家減税という浪費の二大病巣に切り込もうとすらしなかった結果です。
来年度予算の編成は、この深刻な矛盾からのスタートです。
大きな浪費は対象外
鳴り物入りで始まった「事業仕分け」第2弾の対象となったのは「独立行政法人」です。
昨年の事業仕分けでは、スーパー中枢港湾など無駄な大型事業や軍事費を温存し、医療・保育や科学技術研究など削るべきではない分野をやり玉に挙げました。
今回も、国立病院や労災病院の統廃合を求め、緊急課題である医療の再生に逆行する評価を下すなど、本末転倒の議論が横行しています。「仕分け人」の大半は旧経済財政諮問会議や規制改革会議の専門委員、財界の代表など、「構造改革」を推進してきた人たちです。事業仕分けで飛び交う効率最優先の議論では、まともな改革は期待できません。
他方で浪費の“大物”は手付かずです。高速道路を造り続けるために設立された高速道路機構も、安全性と経済性の両面で破たんが明らかな高速増殖炉「もんじゅ」も仕分けの対象外にしています。
事業仕分けでは天下りが焦点になりました。しかし、鳩山政権に天下りそのものの厳格な禁止に踏み込む姿勢はありません。
税制改定については、政府税制調査会の専門家委員会が議論を進めています。
「(法人)税率そのものについて、下げることが是か非かということよりも、税率を引き下げることを念頭に置きながら議論した」「消費税の税率引き上げなどを行った際の経済的な影響などを論点として取り上げた」(神野直彦委員長)―。法人税率の引き下げと消費税の増税は、もはや税制改定の「前提」の扱いです。
仙谷由人国家戦略相、菅直人財務相、前原誠司国交相ら閣僚も消費税増税を求める発言を繰り返しています。民主党の参院選公約の原案は法人税率の引き下げを明記し、近い将来の消費税増税を掲げています。
予算の使い方では「ばらまき」の一方で本当のむだ遣いの病巣にまったくメスを入れられず、予算を集める方では法人税率を引き下げて大企業に奉仕する―。こんなやり方では財政は崩壊します。
鳩山政権は社会保障の財源を消費税増税の口実にしようとしていますが、その実態は、放漫な財政運営のツケを庶民に回す犠牲の転嫁以外の何物でもありません。
ツケ回しは許せない
消費税増税は暮らしと内需に大打撃を与え、健全な経済成長への道を閉ざす最悪の選択です。しかも、1997年の税率引き上げで味わった苦い経験は、消費税増税は経済の土台を壊して全体の税収を減少させ、かえって財政を悪化させることを示しています。
今年度予算で抱えた大きな矛盾をさらに広げ、消費税増税で庶民にツケを回す鳩山政権のやり方はやめるべきです。
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