2010年5月4日(火)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 民主党の小沢一郎幹事長への「起訴相当」議決で注目を集めている検察審査会(検審)。これを題材にした小説に佐野洋さんの『検察審査会の午後』があります。検察審査員に選ばれた市民らが、とまどいながらも真剣に話し合って審査する姿が描かれています▼同書「あとがき」によると佐野さんは1989年、ある週刊誌に「検察審査員の経験者連絡をこう」という趣旨のメッセージを載せました。当時、「赤旗」日曜版に警察による盗聴事件をテーマに小説を書くことになっていて、事件を追及する主人公を審査員にしようと考えていたためです▼結局、日曜版の連載『卑劣な耳』では、その構想は使いませんでしたが、何人もの検審経験者と知り合ったことが、「市民目線」の検審小説に結実していきました▼実際の審査でも市民の良識・常識がおおいに生かされています。責任逃れをする小沢氏にたいして検審議決書は「市民目線からは許し難い」と断罪。起訴して裁判で真実と責任の所在を明らかにすることこそ「善良な市民としての感覚」だと強調しています▼ところが議決翌日、民主党は検審のあり方を「検証」する議員連盟を結成。事務局長の辻恵衆院議員は「簡単に国民の感情で被告席に着けていいのか」と攻撃しました▼最高裁判所のホームページは、検審制度の趣旨についてこう説明しています。「公訴権の行使に民意を反映させて、その適正を図る」。民主党は、民意という民主主義のイロハまで忘れてしまったのでしょうか。





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