2010年4月30日(金)「しんぶん赤旗」

「地域主権」法案

福祉施設 環境悪化も

職員数・面積 最低基準守る保証なし


 保育所や特別養護老人ホーム(特養)など福祉施設の設備・運営基準について、政府は、28日に参院を通過した「地域主権改革」一括法案で、国の定める最低基準を撤廃し、ガイドライン化したうえで、地方の条例にゆだねようとしています。

 これには、「地方任せになれば、いまでも低い職員配置基準がさらに下がる」「保育所の子どもの詰め込みがいっそうひどくなる」などの批判が高まりました。政府は、職員の人数や利用者1人当たりの居室面積、人権に直結する基準については、国が示すガイドラインを「地方が従うべき基準」にし、地方に守らせるとして、批判をかわしています。

 ところが、それらの基準を含め、今後国が示すガイドラインが現行の最低基準を維持するものになるのか政府は明言していません。日本共産党の山下芳生参院議員の国会審議での再三の追及にも「省令で決める」としか答えず、国会で責任ある審議ができない状況です。

 一方で、厚生労働省は6月中にも省令を改定し、特養の居室面積基準を引き下げる方針であることが29日までに分かりました。1室当たり13・2平方メートル(約8畳)以上とされている個室の面積について、10・65平方メートル(約6畳)に引き下げる方針です。居室面積は、「地方が従うべき基準」とされています。

 国の基準そのものを引き下げたうえで、それを「地方が従うべき基準」にするというものです。つまり、「地方に守らせる」という基準でも、現行の最低基準が守られる保証がない実例です。

 政府は、山下議員の求めにもかかわらず、省令で決めるという国の「ガイドライン」の中身を国会に示しません。国会審議抜きに、今後、省令で最低基準を引き下げる恐れを強く抱かせます。

 保育所はじめ児童・老人福祉、障害者施設の現在の基準は、面積や職員配置でも、防災基準でも諸外国と比べ劣悪です。そのために、グループホームの火災などで犠牲者が絶えないのが実態です。国が国民に保障すべきナショナルミニマムとして基準を引き上げたうえで、財政責任を果たすことこそ必要です。

 ところが、「地域主権改革」一括法案は、国の責任を投げ捨て、地方任せにします。さらに現行の不十分な国の最低基準さえ、これを機に、引き下げようという動きは重大です。(西沢亨子)





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