2010年4月25日(日)「しんぶん赤旗」
主張
経済戦略
健全な成長への処方せんは
日本は先進国の中で唯一、過去10年にわたって「成長の止まった国」「国民が貧しくなった国」になっています。
リーマン・ショック前の10年間に、先進7カ国のうち日本以外の6カ国が27〜74%の経済成長(名目)をしたのに、日本はわずか0・4%増です。雇用者報酬も6カ国が17〜73%増やしたのに日本だけがマイナスを記録しています。
世界の経済危機で、とりわけ日本が深刻な打撃を受けた原因が浮かび上がっています。
経済危機の影響が集中
こんな異常事態を生んだのは、正社員を非正規雇用に置き換え、下請けに際限のない単価の切り下げを押し付けてきた財界・大企業の経営戦略です。それを可能にしたのは、財界言いなりに労働法制を規制緩和し、中小企業基本法を改悪してきた自民党政治であり、「構造改革」路線です。
大企業は国民が汗水流して生み出した富を吸い上げて利益を増やし、株主配当を増やすと同時に内部留保を蓄積してきました。大企業の内部留保は国内総生産の半分にまで膨れ上がっています。まさに大企業が富を独り占めにする異常なシステムであり、それこそ日本経済の成長を止め、国民を貧しくした異常事態の根源です。
このシステムは大企業が富を吸い上げる「ポンプ」になると同時に、経済危機の影響を日本に集中する世界生産の「調整弁」の役割も担いました。
21世紀に入って大手製造業は工場の海外進出を加速しました。しかし、生産を現地の需要に合わせて増減させる生産調整の役割は、主に日本の工場に背負わせてきました。そのために、世界経済危機による海外の需要減少の影響が日本に集中し、日本の生産を世界で最も激しく落ち込ませて暮らしと経済に大打撃を与えました。
日本が世界の工場の「調整弁」となった理由を、トヨタの生産体制を分析した京都大学の研究者が経済誌で次のように指摘しています。海外では雇用を守る規制や労働時間規制が厳しく、親企業と下請けの関係も対等で、需要に応じた生産調整が難しいからだ―。
海外需要が強まれば日本で低賃金・不安定雇用を増やし、正社員と下請けに無理を重ねさせ、弱まれば派遣切り・下請け切りで「調整」するやり方です。労働者や下請けを守るルールが弱い日本を「調整弁」にして世界の矛盾を集める体制です。
日本共産党五つの提言
大企業の行動は暮らしと経営の存立基盤そのものを壊す行動であり、それを改めさせない限り日本経済を覆う不安は解消できません。大企業の行動を変えさせるためには、せめて欧州並みの社会的ルールをつくる必要があります。
日本共産党の「五つの提言」は、この課題に正面から応える提案です。人間らしい雇用のルールを確立し、非正規から正社員への雇用転換を進めること、大企業と中小企業の公正な取引ルールをつくり、中小企業の振興に本腰を入れて取り組むことをはじめ、雇用、中小企業、農業、社会保障、財源問題にわたる「成長戦略」です。
これらを通じて「ルールある経済社会」への改革を進めることこそ、当面の危機を打開するとともに、家計・内需の回復を起点にして日本経済を健全な成長軌道に乗せる抜本的な処方せんです。