2010年4月25日(日)「しんぶん赤旗」

英総選挙

戦略核の見直し焦点に

元軍高官の主張が拍車


 5月6日投票の英国総選挙で同国の戦略兵器であるトライデント核兵器システムの更新が必要かどうかをめぐる問題が焦点の一つに浮上しています。元陸軍元帥ら退役した軍高官4氏が最近、更新計画の見直しを主張したことが論議に拍車をかけました。(ロンドン=小玉純一)


 元軍高官4氏は、新政権が行う予定の「戦略防衛見直し」でトライデントを見直しの対象から除外すべきでないとし、「07年決定以降、議論が変わっている。早期の核軍縮が国際平和達成の道というコンセンサスが増大している」と強調。さらに「トライデント更新の他国への影響を考えるべきだ」と指摘しています。

 元軍高官の主張を有力紙タイムズが21日に伝えると、各紙はさっそく、トライデント更新は不必要としている「(野党第2党の)自由民主党への支援」と報道。英国放送協会(BBC)も同日夜のニュース番組でトライデント問題を特集しました。

 自民党のクレッグ党首は元軍高官4氏の発言の報道を受け、トライデント更新支持の政権党の労働党と野党第1党の保守党に対し、「1000億ポンド(約14兆3000億円)を国民に支出させるのは戦略的間違いだ。より安い対案を探求していない」と改めて批判しました。

 クレッグ氏は15日の3党首テレビ討論でも、「ボタン一つでモスクワを破壊するように設計されたトライデントに25年間で1000億ポンドも支出することは正当化できないし、その余裕もない」「世界は動いている。われわれは、もはや冷戦下にいるのではない」と述べ更新計画の見直しを主張しました。

 反核団体、英核軍縮運動(CND)のケート・ハドソン議長は「自由民主党はすべての核兵器の廃棄を主張すべきだ。他の形の核兵器を考えるべきでない。しかし重要なことは、自民党がトライデントへの公的資金浪費に強く反対したことだ」と評価しています。

 日曜紙メール・オン・サンデーが18日に報じた世論調査では、自民党の主張するトライデント廃棄に46%が賛成、反対は34%でした。


 トライデント 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)で、英国唯一の戦略核システム。2020年代に退役期限を迎えるため、英国議会は07年に、1000億ポンド(約14兆3000億円)と見積もられるシステムの更新を決定。ただ支出の決定は今年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議後に先送りされており、新政権の課題となっています。





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