2010年4月24日(土)「しんぶん赤旗」

何狙う「地域主権改革」

保育所防災基準

雑居ビル、避難路なしも


 国会で審議中の「地域主権改革」一括法案では、保育所などの児童福祉施設や特別養護老人ホーム(特養)などの老人福祉施設、障害者施設の設備・運営基準が原則、地方任せになります。なかでも直接、命にかかわるのが耐火や避難経路について定めた基準です。

 今回の「地域主権改革」による「規制緩和」で、とくに懸念されるのが、建築基準法に上乗せして最も厳しい基準を課している保育所の防災基準です。

厳しい上乗せ

 保育所の場合、現行では、2階に保育室などがある場合は耐火・準耐火建築でなければなりません。屋内階段のほかに、火が回らないように耐火構造で区画された避難用階段か避難用の屋外滑り台なども義務づけられています。

 3階以上では、さらに厳しい基準があり、(1)階段などの避難設備が保育室から30メートル以内にあること(建築基準法では50メートル)(2)調理室は耐火構造の床と壁で、ドアなどは防火ドアやシャッターが下りるようなものであること(3)壁や天井は不燃材料であること―などが求められています。

 保育所独自の規制が外され建築基準法だけになるとどうなるでしょうか。

 300平方メートル未満の施設の場合、2階でも耐火・準耐火でなくてよくなります。木造は、耐火造に比べ火災の延焼件数が10倍という統計もあり、被害が深刻化します。くわえて50平方メートル(30畳)以下なら階段が一つですみます。階段が一つしかない木造の2階に小規模な施設がつくられる恐れがあります。

 耐火・準耐火構造のオフィスビルなどで保育室が100平方メートル以下の場合、2〜4階に保育室があっても、階段が一つでよくなります。雑居ビルの2〜4階に認可保育所がつくられ、調理室から火が回らないようにする規制も弱まります。

 こうした「規制緩和」を求めてきたのは、保育事業への参入を容易にしたがってきた営利企業です。

企業の求めで

 全国で保育事業を展開し、厚労省の審議会の保育専門委員も務めるJPホールディングスの山口洋代表取締役は、「首都圏では事務所ビルなどを保育所に改装するケースが中心だ」が、避難階段、2方向への避難経路の確保などの規制が邪魔になっているとして、規制緩和を求めています(「毎日」09年11月20日付)。まさに今回の法案で緩和されようとしている内容です。

 老人福祉施設の場合、施設基準に建築基準法などへの上乗せ規定が保育所ほどありません。また、認知症の人のグループホームには耐火・避難についての上乗せ規定がありません。それが、グループホーム火災による痛ましい犠牲を生んでいるともいえます。3月に札幌市で起きた木造2階建て施設の火災事故ではお年寄り7人が亡くなりました。その1年前には群馬県の介護施設で10人が亡くなっています。

 幼い子どもや介護が必要な高齢者は、独りでは逃げられません。国には、安全のための基準をきちんと定めた上で、防災施設整備のためにお金を出し、命を守る責任があります。(西沢亨子)





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp