2010年4月23日(金)「しんぶん赤旗」
主張
元秘書有罪
首相はいつまで逃げるのか
首相は、自らの「政治とカネ」の疑惑をいつまでも説明しないですむと思っているのか―。東京地裁が鳩山由紀夫首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」をめぐる偽装献金事件で、政治資金規正法違反に問われた元公設第1秘書に有罪を言い渡したのに、首相は自ら疑惑を説明しようとしません。
これまで首相は、取り調べ中や裁判中を理由に、国会などでのくわしい説明を逃れてきました。しかし、元秘書への有罪判決で、もはやその口実は成り立たなくなりました。首相は直ちに自らの疑惑を説明し、資料提出や元秘書の証人喚問などにも応えるべきです。
虚偽記載は重大犯罪
東京地裁が元秘書に下した、禁固2年、執行猶予3年の判決は決して軽いものではありません。
事件は、首相の資金管理団体「友政懇」の収入の相当部分が首相自身と母親から提供された資金だったのに、会計実務を担当した元公設第1秘書が、亡くなった人などの名義を使って、虚偽の個人献金として政治資金収支報告書を提出していたというものです。判決は、「友政懇」の2008年まで5年間の寄付3億5990万円と、関連する地元の政治団体「北海道友愛政経懇話会」の収入4207万円について虚偽記載と認め、元秘書に有罪を言い渡しました。
判決が指摘するように、政治資金の収支報告は、「政治資金を国民の前にガラス張りの状態にして、その政治活動を国民の不断の監視と批判の下に置く」ために提出が求められているものです。その虚偽記載がきびしく断罪されるのは当然です。政治資金の収支報告は政治家の義務であり、担当者が罰せられて政治家本人が追及を免れるという筋合いではありません。
しかも判決は、実態とかけ離れた政治資金の収支報告が提出され公開されたことで、政治資金の公開制度や政治活動の公明性に対する国民の信頼が損なわれ、「国民の間に政治に対する不信感が醸成されかねないことも懸念される」と指摘しています。こうしたきびしい批判は、担当者にとどまらず、政治家本人がうけとめるべきものです。首相自身が問題に向き合い、疑惑を解明し、国民の政治不信を解消することが不可欠です。
この問題での首相の説明は不誠実です。虚偽記載の責任は元秘書に押し付け、自らの資金提供は認めたが母親からの巨額の資金提供については「知らなかった」で押し通してきました。しかも、自己資金や母親からの資金を含め少なくても十数億円が提供されていたのに、政治資金収支報告書で出てくるのは4億円あまりです。残りは何に使ったのか、国会で何度追及されても、首相は「裁判中」などを理由に答えませんでした。
首相の発言後退は重大
しかもこれまで判決が出れば使い道についても説明したいといってきた首相が、判決直前の国会答弁では、疑惑解明に背を向け、「(裁判は秘書)個人の話だ」とか、国会への資料提出は「必要ない」などと言い出していることは重大です。首相がいったん約束したことの後退は、絶対容認できません。
内閣支持率が大幅に低下しているどの世論調査でも、首相が説明責任を果たしていないという指摘が圧倒的です。首相はいまさら言い逃れせず、疑惑についての自らの説明責任を果たすべきです。