2010年4月22日(木)「しんぶん赤旗」

主張

温暖化対策基本法案

抜本修正して責任を果たせ


 鳩山由紀夫首相は昨年9月の国連気候変動首脳会合で、温室効果ガスの排出量を2020年までに25%削減すると明言しました。旧自公政権の後ろ向き姿勢を転換し、温暖化対策をめぐる国際交渉を促進する意欲的な目標として、内外の期待を集めました。

 ところが、鳩山政権が提出し衆院で審議が始まった地球温暖化対策基本法案は、期待に背を向ける重大なものです。国際公約を果たす立場を放棄するもので、根本からの見直しが避けられません。

足かせはずせ

 法案は25%削減の目標をあげたものの、「すべての主要な国」の合意が条件だと重い足かせをはめています。国際的な枠組みをつくる重要性を強調しながら、米国や中国が参加しない限り、日本はやらないと言わんばかりの姿勢は、現実には国際協力に障害をもたらすものです。後ろ向きの意思表明は、「国際競争力」を理由に温暖化対策に抵抗する財界の主張と軌を一にしています。法案に積極性をもたせるには、この足かせをはずすことが欠かせません。

 排出削減の実効的措置を盛り込むことも不可欠です。日本は排出量を増やし、1990年比6%減の京都議定書の目標は達成困難です。排出量の8割以上を占める産業界の排出抑制を、財界の自主努力にまかせたことが最大の理由です。事態を変えるには、政府が産業界と拘束力のある削減協定を結ぶことが第一です。

 ところが法案は産業界への削減義務づけに踏み込んでいません。一方で、一般国民に国や産業界と同列に排出抑制の努力を求めています。家庭部門の排出責任を強調し、対策に伴うコストを国民に広くかぶせることで、産業界の負担を減らす狙いがみえています。

 削減目標に見合う実効的対策がないなかで、法案は原発頼みの姿勢を鮮明にしています。政府は削減が進まない理由を、地震による停止など原発の稼働率の低さに求めてきました。稼働率を無理やり引き上げたり、原発を大増設することの危険性は明白です。

 エネルギー政策を転換し、自然エネルギーの利用を拡大することが重要です。法案は自然エネルギーの導入目標を10%としていますが、20%に引き上げるべきです。

 気温上昇を産業革命以来で2度以内に抑えるべきだとの科学的要請が、指針として世界的に広く認められています。歴史的に大量排出してきた先進国の一員として、京都議定書を採択した京都会議の議長国として、日本は野心的な排出削減を行う大きな責任を負っています。将来世代の生存に必要な挑戦であり、新たな地平を切り開くべき壮大な対策が求められています。それでこそ、国際協力の促進にも貢献できます。

経済運営の柱に

 欧州連合(EU)は20%削減の目標を堅持し、先進国が努力するなら30%に引き上げるとしています。温暖化対策を経済運営の柱にすえ、新しい産業や雇用を生み出している姿勢に学ぶべきです。

 日本共産党の笠井亮議員は本会議質問で、他国の姿勢にかかわらず自ら約束した削減目標に責任を負う態度を確立し、その裏づけとなる総合的対策をとるよう政府に強く求めました。法案は日本の責任に見合うとはとうてい言えず、抜本的に修正すべきです。





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