2010年4月21日(水)「しんぶん赤旗」

主張

若手研究者問題

就職難解決と待遇改善を急げ


 大学院の博士課程を修了しても研究職につけるのはわずかで、低賃金で働かす「ポストドクター」や非常勤講師という不安定な雇用で「使いすて」にされる――若手研究者の就職難と劣悪な待遇が、大きな社会問題となっています。

学術と社会の発展を阻害

 この問題では、日本学術会議が4月の総会で、「科学技術立国としての日本の将来は暗い」と警告するなど、日本の学術と社会の発展にかかわる問題として解決をもとめる声が広がっています。

 鳩山由紀夫政権は、昨年末発表した「新成長戦略」で「理工系博士課程修了者の完全雇用」をかかげましたが、具体的な対策はなんら示していません。人文・社会科学系についてはまったく度外視しています。それどころか、昨年の「事業仕分け」では短期的な効率主義や成果主義の立場から、若手研究者支援を“過保護だ”として予算を縮減しようとさえしました。

 国立大学に国が交付する運営費交付金は、自公政権下の5年間で720億円も削減されました。「行革」の名による人件費5%削減の義務付けによって、若手研究者のポストが減少し、35歳未満の大学教員の割合が、15年前と比べて19%から13%に減っています。

 独立行政法人の研究機関として最大規模の産業技術総合研究所(産総研)の運営費交付金は、2001年度からの8年間で27億円(4%)も削減されました。産総研も人件費削減の義務付けによって正規雇用の研究者が1割減少し、「ポスドク」など任期付きの研究者が倍増しています。

 鳩山政権は、総選挙での「国立大学の運営費交付金の削減方針を見直す」という公約に反し、今年度予算で110億円(前年度比0・9%)も削減しました。産総研の場合は51億円(8%)の削減です。若手研究者ポストが減少し、就職難がさらに深刻になります。

 博士課程を修了しても就職できない、「博士の就職難」は、大学院生倍加政策による院生の増加に見合って、政府が、就職先を確保する施策をとってこなかったことによるものです。国立大学と独法研究機関への人件費削減の義務付けを撤廃するとともに、国立大学への運営費交付金を削減前に戻し、さらに増額すれば、若手研究者が活躍できるポストを思い切って増やすことができます。学校教員や公務員などの公的職務への大学院生の採用も広げるべきです。

 若手研究者の劣悪な待遇の改善も急務です。日本学術会議は、博士課程在籍者を「研究職業人」と位置づけ、経済的自立ができるだけの財政支援を、諸外国と同じように保障すべきだと提言しています。現在、経済的支援(特別研究員事業)をうけているのは、博士課程在籍者の6・4%だけです。支援枠の抜本的拡充が必要です。

大企業にも雇用促進を

 「ポスドク」や大学非常勤講師への正規雇用者との均等待遇、社会保険への加入促進も必要です。

 大企業が博士課程修了者をほとんど採用しない現状も大きな問題です。しかも、派遣や期間社員などの非正規で雇い、その能力と研究成果をかすめとり、使い捨てにしている大企業すらあります。

 鳩山政権が「完全雇用」をうたうのならば、大企業に博士の正規雇用を大幅に増やすよう求め、社会的責任をはたさせるべきです。





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