2010年4月19日(月)「しんぶん赤旗」

主張

裁判権放棄

「密約」の公表と破棄が必要だ


 在日米軍人らの「公務外」犯罪について、日本側が重要案件以外は裁判権を放棄すると約束した「日米密約」の存在を外務省が認めたことが注目を集めています。日本共産党の井上哲士参院議員は岡田克也外相に、密約文書そのものの調査・公表を要求しました。

 裁判権放棄の「密約」は、国際問題研究者の新原昭治氏が米公文書館で入手した米政府文書ですでに明らかになっていますが、日本政府がその存在を認めたのは初めてです。政府は密約文書を公表し、破棄すべきです。

日米合意議事録に明記

 裁判権放棄の「密約」の存在を示す文書は、外務省が公表した日米「核密約」調査の関連文書のなかにありました。1958年10月4日、岸信介首相(当時)も参加した日米安保条約改定交渉の第1回会談で、マッカーサー駐日大使(同)が「53年10月28日刑事裁判権に関する分科委員会の合意議事録の中に、日本側はある場合、裁判権の行使を譲る趣旨が記録されている」とのべていたことが明らかにされています。

 この日米合同委員会刑事分科委員会で合意された「密約」は米政府文書に記録されています。日本政府が「日本にとって著しく重要と考えられる事件以外については第1次裁判権を行使するつもりがない」との声明まで行っていたことを明記しています。

 法務省は刑事局長名で全国の検事正に、「実質的に重要であると認める事件についてのみ第1次裁判権を行使する」との通達をだし、「密約」実施を徹底させています。法務省の甲斐行夫官房審議官はこの通達が「現在も有効」と井上議員に答弁しています。

 実際、検察が受理した案件の処理状況をみても、2008年の「窃盗」での起訴は日本人42・4%に対し米軍人らは5・3%、「自動車による過失致死傷」では日本人21・8%に対し米軍人らは7・9%というように、日本人に比べて米軍人らの起訴率がきわめて低くなっています。「密約」にもとづいて検察が米軍人らを特別扱いにしていることを示しています。

 主権国家というなら、在日米軍人らの犯罪は日本が裁くのが当然です。「公務外」犯罪ならなおさらです。「著しく重要」でないといって裁判権を放棄するのは主権国家にあるまじき態度です。日本に米軍人らをできるだけ裁かせないという米政府の言い分に屈した約束は破棄するしかありません。

 裁判権放棄の「密約」は日本の主権をじゅうりんする大問題なのに岡田外相は、「2008年に調べたときには文書はなかった」とか、「たいへんな作業」になるからとかいって積極的に対応しようとはしません。これでは主権国家としての責任を果たせません。外務省はただちに「密約」の調査を行い、公表すべきです。

主権放棄の異常ただせ

 米軍基地があるところはどこでも住民は米軍人らの犯罪の恐怖を強いられています。なかでも沖縄は深刻です。裁判権放棄が米軍人らの犯罪を助長しているのは明白です。「基地国家」の異常のなかでも米軍の特権を認める異常は緊急に正されるべきです。

 「基地のない日本」を求める願いと結んで、裁判権放棄の「密約」を調査・公表し、破棄するよう求めていくことが重要です。





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