2010年4月19日(月)「しんぶん赤旗」
乱立新党
中身は古い政治
“自民もダメ、民主もダメ”。そんな流れの「受け皿」になろうと、「第三極」を自任する「新党」結成の動きが相次いでいます。しかし、先の総選挙で国民の審判を受けて退場した自民党政治の「二つの異常」―アメリカいいなり、財界・大企業中心―をただせるのか。その「モノサシ」でみてみると…。
みんなの党 「小泉改革」の継承宣言
「『民間にできることは民間に、地域にできることは地域に』という構造改革をやっていかないと、危うい状況から日本は脱却できない」―。2009年1月、自民党から離党し、「みんなの党」を立ち上げた渡辺喜美代表は、近著(『民主党政治の正体』)でこう述べています。
貧困と格差を広げた「小泉改革」が「中途半端に終わった」として、さらなる「構造改革」をめざしているのです。
その目玉にするのが、小泉「改革」の柱の一つ「公務員制度改革」です。渡辺代表は「小泉さんや竹中さんの改革のなかで、非常に中途半端に終わった最大の問題が、公務員制度(改革)」(3月13日、民放テレビ)と語っています。
「改革」の内容は、国家公務員の数を大幅削減し、幹部公務員を任期付きの特別職にして、成果を上げなければ降格処分して、民間企業から人材を公募するもの。「全体の奉仕者」としての公務員のあり方を改悪し、住民サービスを低下させ、強権国家づくりをめざすものです。渡辺代表は、国会議員定数の大幅削減や政党法(国による政党内部への関与・介入)の制定も主張しています。
また、「将来的な増税を一切認めないという立場は、われわれもとらない」と民主党政権と同様に消費税増税を示唆。一方で、米軍普天間基地問題では「(名護市辺野古沖への『移設』という)国家間の合意がある」「(鳩山政権の)お手並み拝見ということだ」(前出、民放テレビ)と自公政権時代の路線継承の立場です。
参院選に立候補を予定する同党候補は、「小泉改革」推進の元官僚や自民党の元国会議員や元地方議員。自民党という「泥船」から逃げ出す人たちの「受け皿」となっています。
みんなの党
・「小泉改革」を「中途半端」として、いっそうの「構造改革」推進
・国家公務員10万人削減、道州制導入(昨年の総選挙マニフェスト)
・「米軍再編への協力」含め「日米同盟を基軸」とすると宣言(同前)
・改憲派の集会(新憲法制定推進大会)に党代表があいさつ予定
「みんなの党」参院候補の顔ぶれ
■自民党から
【比例】
小野次郎・前衆院議員、清水鴻一郎・前衆院議員、柴田巧・前富山県議(元森喜朗秘書)、小熊慎司・前福島県議、田中茂・元中曽根康弘秘書
【選挙区】
佐藤正夫・前福岡県議(福岡選挙区)
■「小泉改革」推進
中西健治・前JPモルガン証券副社長(神奈川選挙区)、薬師寺道代・前内閣官房構造改革特別区域推進本部評価委員会委員(愛知選挙区)
たちあがれ日本 消費増税と改憲派合体
「たちあがれ日本」の旗揚げ会見(10日)に並んだ顔ぶれをみると、平沼赳夫代表は森・小泉両内閣で経済産業相、共同代表の与謝野馨氏も小泉内閣当時の自民党政調会長や金融・経済財政担当相、麻生政権の官房長官を歴任するなど、自公政権の悪政を推進してきた人物ばかりです。
与謝野氏は「現在の状況をみれば、日本もあっという間に没落する可能性がある」と財政破たん論をあおりますが、その要因をつくった責任者です。麻生政権時代にも「戦後最悪の経済危機」だと嘆いていました。
しかも、与謝野氏は「消費税率の引き上げなしに財政再建が可能であるという幻想を振りまくのは、無責任極まりない」(『文芸春秋』5月号)と民主党を批判。結党宣言でも雇用を「規制緩和と消費税収で創(つく)る」を主張しています。
一方、綱領でも結党宣言でも「自主憲法の制定」を明記。平沼氏は、日本の侵略戦争を美化・肯定する「靖国」派の日本会議国会議員懇談会の会長であり、著書で改憲試案を示し、「軍隊の保持」や、集団的自衛権も「行使することを可能」とするなどとうたっています。
たちあがれ日本
・自民党と同様に「自主憲法制定」(綱領)を前面に掲げる
・財界が求める「消費税率引き上げ」を結党宣言に掲げる
・「日米安保のおかげで日本が…平和を維持してきた」(『文春』論文)として「日米同盟基軸」を結党宣言で主張
「たちあがれ日本」の顔ぶれは…
平沼赳夫 小泉内閣で経産相として「構造改革」推進
与謝野馨 小泉政権で党政調会長、安倍内閣で官房長官、麻生内閣の経財・規制改革担当相、財務・金融・経財担当相
園田博之 村山内閣の官房副長官、麻生政権で党政調会長代理、谷垣総裁で幹事長代理
藤井孝男 橋本内閣の運輸相
(敬称略)
日本創新党 財界の主張そのままに
現職首長、首長経験者らが18日に結成した「日本創新党」(代表=山田宏杉並区長)。山田氏と中田宏・前横浜市長、斎藤弘・前山形県知事の3氏は、『文芸春秋』5月号の論文で、「日本は三年後に財政破綻(はたん)する」と危機感をあおり、財界の主張そのままの「構造改革」路線を主張しています。
政策的には「『民間にできることは民間に』の構造改革路線を追求」「(法人税を)少なくとも三〇%程度にまで引き下げる必要がある」「『道州制』を導入する」などと自民党で議論されていた内容そのまま。「公立保育園の民営化」を実績と売り込むありさまです。
国や地方の公務員を3分の2に減らすなど、リストラ計画も他の新党と共通です。
山田氏も中田氏も「新しい歴史教科書をつくる会」の中学歴史教科書を採択させた首長です。
公明党 悪政の共同執行者
公明党の山口那津男代表は、「閉塞(へいそく)状況をなんとか打開してほしい。そういう国民の願いが、第三の勢力への期待として表れています」(『潮』5月号)とし、街頭演説で「真の第三の勢力たらんと自負している」と訴えています。
しかし、公明党は自民党との連立政権で、社会保障費の自然増から毎年2200億円を削減し、「成長戦略」と称して労働法制の規制緩和を進めて「使い捨て」労働を増やし、インド洋上での自衛隊の給油活動、自衛隊のイラク派兵に賛成してきました。悪政の共同執行者です。
国民の暮らしと平和を壊して“閉塞状況”をつくった反省が、公明党には、まったくありません。
公明党内から「利権・旧守・ジリ貧のイメージの今までの自民党とはもう一緒にやっていけない」(福井県)との声も出るなか、参院選に向けて自民党出身のみんなの党と水面下で協力関係を築きつつあります。