2010年4月17日(土)「しんぶん赤旗」
米の放射性廃棄物搬出
「安全性」の根拠をすりかえ
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米海軍は16日、原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)艦内からの放射性廃棄物の搬出を強行しました。
これまで日本政府は放射能事故に対する住民の不安をかわすため、GWの定期整備は「放射線の管理を必要としない通常のメンテナンス」(外務省・梅本和義北米局長)だと説明してきました。
しかし、昨年1〜3月に原子炉の修理や放射性廃棄物の搬出が行われ、これが虚偽の説明だったことが明らかになったため、日米両政府は新たな偽りの論理を持ち込みました。
それが、GWからの「放射能にさらされた固形廃棄物の横須賀における移送に関する合衆国政府からの説明」なる文書(4月10日付)です。
同文書は、米原子力艦船の「安全性」の根拠とされる1964年8月17日付エードメモワールなどに示した「合衆国政府のコミットメント(誓約)に合致している」として、放射性廃棄物の搬出を正当化しています。
しかし「説明」は、エードメモワールの重大なすりかえを行っています。
第一のすりかえは、「固形廃棄物は、…通常の原子力潜水艦によって合衆国の沿岸の施設又は専用の施設船に運ばれたのち包装され、かつ、合衆国内に埋められる」という記述に関するものです。素直に読めば、艦船自体が、放射性廃棄物を米国まで運ぶと解釈できます。
ところが、「説明」は、「通常の原子力潜水艦によって」の部分を意図的に省略して引用。GWから放射性廃棄物を搬出して貨物船に移し変えることが、エードメモワールに合致しているかのように見せかけています。
第二は、「放射能にさらされた物質は、通常、外国の港にある間は、通常の原子力潜水艦から搬出されることはない」との記述に関するもの。これも、GWの横須賀停泊中は、放射性廃棄物の搬出は行わないと読むのが常識的です。
ところが、「説明」は、「この『搬出される』とは、日本の陸上に搬出されるという意味と理解される」としています。
さらに、「通常の原子力潜水艦の燃料交換及び動力装置の修理を日本国又はその領海内において行なうことは考えられていない」との記述に関して、「動力装置」を「推進装置」に、「修理」を「メンテナンス」に言い替えるという“小技”まで使っています。
もともと、64年のエードメモワールは、原子力潜水艦の日本への一時寄港に関する覚書であり、原子力空母の常駐を想定したものではありません。矛盾が生じるのは当然です。しかし、エードメモワールを「安全性」の根拠とした以上、これを明文通りに守る責務が日米両政府にはあります。 (竹下岳)
米政府「説明」に見られるエードメモワールのすりかえ
エードメモワール(1964・8・17)
●固形廃棄物の処理
「固形廃棄物は、承認された手続に従い、通常の原子力潜水艦によって合衆国の沿岸の施設又は専用の施設船に運ばれたのち包装され、かつ、合衆国内に埋められる」
●放射性廃棄物の搬出
「放射能にさらされた物質は、通常、外国の港にある間は、通常の原子力潜水艦から搬出されることはない」
放射性廃棄物移送に関する「説明」 (2010・4・10)
「1964年のエード・メモワールは、固形廃棄物が、承認された手続に従い、合衆国の沿岸の施設又は専用の施設船に運ばれたのち包装され、かつ、合衆国に埋められると述べている」
「1964年のエード・メモワールにいうこの『搬出される』とは、日本の陸上に搬出されるという意味と理解される」