2010年4月15日(木)「しんぶん赤旗」

主張

財界「成長戦略」

これでは大企業の先もない


 日本経団連が13日、財界版の「成長戦略」を発表しました。

 「企業の活性化なくしては雇用の創出も豊かな国民生活の実現もできない」(御手洗冨士夫会長)として、企業の「国際競争力」の強化を前面に押し出した戦略です。

 そのために、国と地方を合わせた法人所得課税の税率を10%引き下げ、労働時間規制などのいっそうの緩和を求め、最低賃金の引き上げは拒否しています。財源論としては、消費税率の大幅引き上げを迫る一方で、企業の社会保険料負担や所得税の最高税率引き上げには反対しています。

「国際競争力」の名で

 厚生労働省の調査によると、労働者の所定内給与は1年半にわたって減少し続けています。大手製造業を中心に業績の改善が広がっていることとは対照的に、国民の暮らしの悪化が続いています。

 日本経団連の「成長戦略」は、そんな国民に消費税増税の過酷な負担増を押し付け、大企業には最大限のサービスを要求する、あきれるほど身勝手な「戦略」です。国際競争力を持ち出せば、何でも許されるとでも考えているのでしょうか。

 厳しい国際競争にさらされているのは日本の大企業だけではありません。欧州では日本の大企業より2〜3割も高い税・社会保険料の負担、格段に短い労働時間と時給千円を超える最低賃金のもとで大企業が競争しています。

 日本の国と地方の法人所得課税の税率は数字の上では高めになっています。しかし研究開発減税など至れり尽くせりの減税措置によって、大企業の実際の負担率は国際的に見ても重くはありません。財務省の資料によると、自動車ではアメリカと同等でドイツより低く、情報サービス業ではアメリカ、ドイツより低い負担率です。

 何より、この10年で大企業の内部留保は142兆円から229兆円に急増しました。税金を払った後のもうけがこんなに積み上がっているのに、さらに税率を引き下げる理由はまったくありません。

 確かに、いま日本の大企業は大きな問題を抱えています。アメリカの消費バブルの崩壊で大きな打撃を受けると同時に、経済対策の恩恵で業績が改善しているとはいえ、国内需要の低迷に苦しんでいます。日本を代表するトヨタ自動車をはじめ、安全の根幹を脅かす欠陥で大規模なリコールも発生しました。

 しかしそれは、正社員を不安定雇用に置き換えて「使い捨て」労働をまん延させ、下請け単価の切り下げで中小零細企業にしわ寄せしてきた矛盾の表れです。自らの飽くなきリストラで内需を冷え込ませて、アメリカの消費への依存を強めたために、誰よりも激しくアメリカの経済危機の影響を受けざるを得ませんでした。同時に、何よりも利益を優先させたコスト削減によって、安全をないがしろにしてきた結果です。

これが財界の総意か

 共に「ものづくり」を支える労働者や中小企業を踏みつけにし、国民に犠牲を強いて自分さえもうかればいいというやり方を続ける限り大企業の先も開けません。それにもかかわらず、日本経団連の「成長戦略」は反省のかけらもなく身勝手な要求を重ねています。

 これが財界の総意だと言うのなら、日本の大企業の将来も危ういものにならざるを得ません。





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