2010年4月14日(水)「しんぶん赤旗」
主張
海兵隊=「抑止力」論
基地押し付けの詭弁許さない
沖縄の米海兵隊普天間基地を撤去せず「移設」を押し付けようという鳩山由紀夫政権の策動に、沖縄県内でも本土でも反対の火の手が上がっています。きょう14日には東京で、即時・無条件撤去を求める中央集会も開かれます。
政府が「移設」に固執するのは、日米軍事同盟を絶対視し、米軍の戦争態勢維持を最優先するからです。海兵隊は日本を守る「抑止力」だという詭弁(きべん)を押し付けるのもそのためです。「抑止力」論をはねかえし、沖縄と本土が連帯して、撤去を求めることが重要です。
明らかな「侵略力」
沖縄の米海兵隊は、米国が世界各地で戦争するさいの「殴りこみ」の部隊です。1991年、チェイニー米国防長官(当時)は、沖縄の海兵隊が「世界的な役割を果たす戦力投射部隊」だと米議会予算委員会で説明しています。世界のどこにでも出撃するのが任務です。文字通り「侵略力」です。
82年には当時のワインバーガー国防長官が「沖縄の海兵隊は、日本の防衛に当てられていない」と米上院歳出委員会で証言しています。米政府が海兵隊は「日本防衛」の任務を持たないと言明しているのです。日本政府が海兵隊は日本が攻撃された場合の「抑止力」というのは通用しない話です。
にもかかわらず鳩山首相や岡田克也外相は、沖縄の海兵隊は「侵略に対する抑止力」だという説明を繰り返しています。米政府や米軍の見解とも違うのに、海兵隊が「抑止力」だと言い張るのは、普天間などの基地を県民・国民に押し付けるためといわれても仕方がありません。
いまやこうした「抑止力」という言い分が通用しないことは、政府の元高官も認めています。かつて防衛省官房長などを歴任した防衛省防衛研究所の柳沢協二特別客員研究員は、「海兵隊はいつでも、どこへでも出動する。特定地域の防衛に張り付くような軍種ではない」と指摘しています。
国会で長年「抑止力」擁護の発言をくりかえしてきた田中均元外務審議官も今年初めの第16回日米安保セミナーで、「沖縄の海兵隊の役割は何か。はっきりした説明がほしい」と疑問を呈しました。防衛研究所研究員の坂口大作陸自2佐も研究論文で「米国が抑止力のために置いているのかどうかも定かではない」といっています。
沖縄の海兵隊が日本を守る「抑止力」などという詭弁が成り立たないのに、政府がそれさえいえば基地を押し付けることができると思い上がるのは、まさに県民・国民を愚弄(ぐろう)するものです。
だいたい海兵隊=「抑止力」論は戦争が起きて、海兵隊を使うことが前提です。そんな戦争のための議論よりも、憲法9条を生かし、アジアの平和をきずく努力こそ、国民を守る政府の責任です。
呪縛を断ち切ってこそ
世界各地への軍事介入作戦の拠点である海兵隊の普天間基地は、戦争を放棄した日本におくこと自体許されません。不当・不法に沖縄県民から奪ってつくられた基地は「移設」による「たらい回し」でなく、無条件に撤去させるしかありません。
「抑止力」論は基地押し付けの根拠にはなりません。政府は海兵隊=「抑止力」論の呪縛(じゅばく)を断ち切り、本腰を入れ無条件撤去の対米交渉を行うべきです。