2010年4月13日(火)「しんぶん赤旗」
主張
無人機攻撃
無法な殺害正当化できない
オバマ米政権が国際テロリスト集団アルカイダとの「たたかい」の柱として、無人航空機を使った攻撃を拡大しています。テロリストの幹部とみなす「標的」をミサイル攻撃で殺害する作戦です。
無法なテロを抑えるには、容疑者を法の裁きに服させることが不可欠です。ところが、米国は「戦争だから」と正当化し、容疑者とみなすだけで司法の枠外で殺害しています。一般市民を巻き添えにし、報復テロを呼ぶものにもなっています。
批判はやまず
先月の米国際法学会総会で、国務省のコー法律顧問が行った講演が注目されました。コー氏は、敵集団に属する個人を追跡・殺害することは、戦時国際法上なんら問題ないと主張しました。論拠として、太平洋戦争中に米軍が山本五十六連合艦隊司令長官の搭乗機を待ち伏せ攻撃・撃墜したのは「当時も今も合法」と述べました。
無人機による殺害が批判を浴びるなか、オバマ政権として初の公式反論でした。しかし、批判はやんでいません。人権の面から調査している国連超法規的殺害問題特別報告者のアルストン氏は、法に照らした議論こそすべきなのに、コー氏の主張は「責任回避」の「広報声明」だと批判しました。
無人機によるパキスタンでの攻撃は、アルカイダや武装勢力タリバン関係者が潜んでいるとされるアフガニスタン国境沿いに集中し、報じられただけでも昨年は53件、今年は3月末までで28件と増えています(米ニューアメリカ財団調べ)。オバマ政権は昨年、アフガンへの3万人増派と並行して攻撃拡大を決めたとされます。
攻撃はさまざまな問題を引き起こしています。パキスタンは米国と交戦しておらず、作戦は主権侵害だとしてパキスタン国民の反発を招いています。攻撃はイエメンやソマリアなどでも行われているとみられ、オバマ政権がアルカイダとの「地球規模での戦争」を強調するなか、同様の作戦がさらに飛び火する可能性もあります。
作戦は軍事秘密とされ、「標的」がテロの責任者であることを示す情報も公表されません。容疑者とされる人物が家族などといる場合も行われ、無関係な民間人に犠牲を広げています。戦場から遠い要員が作戦を担当することから、「テレビゲーム感覚」になっているとの批判も根強くあります。
無人機などによるテロ容疑者の追跡・殺害は、米軍と中央情報局(CIA)それぞれが行っています。管理・監督もあいまいで、米国防総省の職員が「民間軍事会社」を使って容疑者を殺害する「闇スパイ作戦」をしていた、との問題も報じられています(ニューヨーク・タイムズ紙)。
テロ根絶の基本に
アフガンでは最近も、米軍特殊部隊が民間人女性5人を殺害し、事件を隠ぺいしたとの疑惑がもち上がっています。テロとの「たたかい」が無法化すれば、無法なテロに対抗する立場が瓦解します。
日本共産党はアフガン戦争前から、テロには国際的な世論の包囲と国際法にもとづく制裁によって、犯罪者に法の裁きをくわえることが大道だと主張し、軍事力行使を戒めてきました。「戦争だから」と殺害を正当化するのでなく、テロ根絶の基本に立ち戻ることが必要です。