2010年4月11日(日)「しんぶん赤旗」
主張
「核兵器のない世界」
いまこそ廃絶に進める世論を
国連が主催して5年に1回開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議が間近に迫りました。会議開会(5月3日)の前日には開催地のニューヨークで、反核運動の国際共同行動がおこなわれます。
アメリカのオバマ大統領が昨年4月プラハでの演説で「核兵器のない世界」を提唱していらい、核兵器廃絶への機運が広がっています。同時にオバマ大統領は、「核態勢の見直し(NPR)」報告などでも核兵器の使用や保有の制限はいうものの、時間を区切った核兵器廃絶の道は示していません。新たな機運を確実に核兵器の廃絶へと進める、世論と運動が重要です。
使用の制限だけでなく
オバマ大統領はプラハ演説で「核兵器のない世界」を目指すとのべ、核兵器を実際に使用したアメリカの「道義的責任」を表明しました。同時に「核兵器のない世界」は「私が生きているうちには達成されないだろう」とのべ、その後も核兵器が存在する限り、核兵器を含む「抑止力」を保持する立場を明らかにしています。
オバマ大統領は今後の核戦略の指針として、政権発足後初めて発表したNPR報告でも、「NPTを順守する非核保有国には核兵器を使用しないという消極的安全保障を実施する」と表明しました。核兵器を「使える兵器」にしようとしたブッシュ前政権とは違って、核兵器の役割を縮小しようという立場です。
一方、オバマ大統領は軍部などが強く反対したのを受けて、核先制攻撃の放棄にまでは踏み込みませんでした。北朝鮮やイランのように「NPTを順守しない国」への核兵器の使用や、核兵器以外の大量破壊兵器による攻撃に核兵器で反撃する可能性も否定していません。同盟国に核兵器を含む「抑止力」(「核の傘」)を提供する立場も確認しました。
NPR報告に見られるように核兵器の使用を制限し、あるいはアメリカとロシアの戦略兵器削減条約(新START)のように保有量を削減していくことはもちろん重要です。しかし、核兵器を実際に使うことを前提にした「核抑止力」論に立ち、核兵器の保有を続ける限り、核戦争の危険を根本から取り除くことはできません。核兵器が世界に存在する以上、新たに核兵器を獲得しようとする国が現れ、あるいはテロリストが不法に核兵器の材料を入手するなどの危険を完全に防ぐことはできません。
だからこそ世界の反核平和運動だけでなく、国連事務総長やアメリカとの軍事同盟に参加してきた国の元首脳、米政府の元高官などが相次いで「核抑止力」論を批判し、核兵器の全廃に向けた国際交渉の開始を求めているのです。5月のNPT再検討会議では、核保有国が核兵器廃絶の責任を果たすことが求められます。
世論と運動が決定的力
核兵器廃絶に向けた前向きの機運を切り開いてきた決定的な力は、国際的な世論と運動です。とりわけ唯一の被爆体験国として被害の実相を訴え、核戦争阻止と核兵器廃絶を求めてきた日本の運動の役割は重いものがあります。
今こそ世界の反核平和運動が、オバマ大統領をはじめ世界の首脳に核兵器廃絶に踏み出すよう求めることが重要です。世論と運動が政治を突き動かすかどうかに人類と地球の未来がかかっています。
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