2010年4月9日(金)「しんぶん赤旗」
米F35 開発費2.4倍(1機140億円)
経費膨張で継続の見通し不良
米国防総省が開発中の次世代戦闘機F35について、調達価格が当初見積もりの2・4倍にまで膨れ上がる見通しとなり、開発継続が危ぶまれています。空・海軍、海兵隊の3軍が基本設計を一本化、国際共同開発も行うなど「経費節減」に努めた末の結果。国防総省は対応に苦慮しています。(山崎伸治)
2002年から調達計画が進められてきたF35は当時、1機あたりの調達見通し価格が6200万ドル(約58億円)でした。国防総省は合計2457機を購入する予定ですが、実戦配備が遅れ、空軍の場合、配備予定は3年遅れの16年となっています。
米メディアによると、国防総省は今月初め、議会に提出した文書で、F35の価格が1億3360万ドル(約124億円)になるとの見通しを示しました。さらに6月に経費見積もりの見直しが完了すれば、これが1億5000万ドル(約140億円)にまで膨れ上がるのではないかとも指摘されています。
計画の中止も
F35の開発経費をめぐっては、3月に議会で公聴会が開かれ、国防総省も開発の遅れを認めました。議会の付属機関の政府監査院(GAO)も開発費が膨れ上がったことを問題だと指摘しています。
現在審議されている2011会計年度(10年10月〜11年9月)予算でも、F35の開発経費は低く見積もられていることが明らかになっています。見通しの甘さを批判され、ゲーツ国防長官は2月1日に、F35開発室の責任者を更迭しています。
米国では「ナン・マカーディ法」で、開発中の兵器の価格が当初見積もりの25%を超えた場合、その開発計画を中止できます。それを覆すには、国防長官が議会に対し、開発が重要不可欠であることなどを説明し、承認を得ねばなりません。
各国にも影響
F35の国際共同開発には英国、オーストラリア、カナダ、デンマーク、イタリア、オランダ、ノルウェー、トルコが参加。合計45億2500万ドル(約4210億円)を負担しています。
日本の航空自衛隊は対空戦用のF4要撃戦闘機の後継機の一つとして、F35を挙げています。米国での開発計画が中止となれば、各国にも影響が広がります。
オバマ政権は昨年、開発費用がかさんだとして、最新鋭のF22ステルス戦闘機の調達計画を中断しています。F35も同じ憂き目に遭うのか、「視界不良」といえます。
F35戦闘機 戦闘機ながら、中距離空対空ミサイルも発射でき、爆撃機の機能も搭載。レーダーに捕捉(ほそく)されにくいステルス性を備えています。米3軍が原型機を一本化し、それぞれ必要な機能をあとから加えるという形で2002年から開発が進められてきました。