2010年4月7日(水)「しんぶん赤旗」
非核国に核兵器使わず
米大統領表明 北朝鮮などは例外視
【ワシントン=西村央】オバマ米大統領は5日、米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、非核保有国に対しては核兵器を使用しないことなど、ブッシュ前政権からの核戦略の転換を表明しました。
また「核兵器にますます重点を置かないようにし、通常兵器の能力が抑止力として機能するようにする」と表明。生物・化学兵器には核兵器でなく、通常兵器で反撃すると述べました。
インタビューは、オバマ政権が米政府の今後5〜10年にわたる核戦略の指針「核態勢の見直し」(NPR)報告を6日に発表することに合わせて行われました。
オバマ氏は、「核不拡散条約(NPT)を順守する非核兵器保有国には、核兵器を使用しないという消極的安全保障を実施する」と表明。一方、北朝鮮やイランのように核兵器開発を続ける国は例外としています。
ブッシュ前政権は2002年のNPRで、「テロや大量破壊兵器への対抗」として、非核保有国に対しても、核の「先制使用」がありうることを打ち出していました。
同紙(電子版)はオバマ政権のNPRの抜粋を紹介。「米国は引き続き、非核攻撃の抑止において核兵器の役割を小さくする」、「米国は新型の核弾頭の開発を行わない」とする一方、生物・化学兵器による攻撃に対し核兵器を使用しないという戦略については、見直す「権利を留保する」としています。
解説
米核戦略の転換示す
「抑止力」の維持変えず
オバマ米大統領が米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューで明らかにした新たな核戦略は、ブッシュ前政権から転換したものとなっています。
ブッシュ政権は2002年1月の「核態勢見直し」(NPR)報告で、核兵器を通常兵器と同様に使う方針を打ち出し、ことにイラクや北朝鮮、中国など7カ国に対する核兵器使用を想定。「核抑止」ではなく、核による先制攻撃を行うという構えを明確にしました。
これに対し、オバマ氏はインタビューで「核不拡散条約(NPT)を順守する非核兵器保有国には、核兵器を使用しないという消極的安全保障を実施する」と言明。ブッシュ政権が否定した「消極的安全保障」を再び採用することを強調しました。
また「核兵器にますます重点を置かないようにし、通常兵器の能力が抑止力として機能するようにする」とも述べています。新たな通常兵器の開発を前提に、核兵器に頼らない防衛戦略を描いています。
オバマ氏は昨年4月の「プラハ演説」で「核兵器のない世界」をめざすと表明。6日に発表される新しいNPRはそれを受けたものですが、オバマ氏のインタビューから新戦略の「力点」がうかがえます。
一つは、NPTを軸とした「核不拡散体制」の強化です。先にロシアとの間で合意した第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約について、オバマ氏は軍縮努力を「世界に明確に示す」ものだと強調。それによって非核保有国の拡散防止努力を促そうとの意図を示しました。
二つは、米ソ冷戦時代のような核対決よりも、核開発を進める北朝鮮・イランのような「孤立した国家」や、テロリストによる核保有を脅威と位置づけていることです。
そのため一定の核軍縮措置をとりながらも、核兵器を「抑止力」として引き続き活用する点は変わりありません。
さらに「核兵器のない世界」の実現が自分の生きている間にはできないとの見解を改めて表明。核兵器を廃絶するという姿勢は見られません。
世界の反核運動がオバマ氏をはじめとする各国首脳に、いまこそ核兵器廃絶に踏み出すよう強く求めることがますます重要になっているといえます。(山崎伸治)
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