2010年4月5日(月)「しんぶん赤旗」
主張
原子力空母修理
放射能「管理」作業は約束違反
2008年9月から横須賀基地(神奈川県)を母港にしている米原子力空母「ジョージ・ワシントン」について、岡田克也外相が「放射能の管理を必要とする作業が艦内で行われている」と初めて認めました(3月16日)。日本共産党の井上哲士参院議員への答弁です。
原子力空母の放射能「管理」作業は昨年以来、常態化しています。岡田外相の見解は、「放射能の管理を必要としない通常のメンテナンス」を行っているというこれまでのごまかし説明では通用しなくなったため、新たなごまかしで米軍の作業を追認するのが狙いです。
新たなごまかしで
「ジョージ・ワシントン」は昨年に続き今年も1月から定期修理を行っています。日本人は排除され、米国ワシントン州にある海軍造船所からやってきた分遣隊約600人が横須賀港内で原子力空母の作業にあたっています。この分遣隊は放射能「管理」を任務とする特別の専門集団です。
放射能の「管理」が必要な作業というのは、原子炉本体ではなくてもその周辺で放射能の汚染が予想される作業だということです。空母艦内とはいえ横須賀港のなかでの作業です。汚染の危険がないという保証はありません。
空母内での放射能管理作業を認めたのは、原子力潜水艦の日本寄港を認めたときの日米両政府のとりきめに照らしても重大です。1964年に日米両政府が交わした外交文書「エードメモワール」は、原潜の「燃料交換及び動力装置の修理」は日本の領海内で行わないこと、港内では放射性物質が「原子力潜水艦から搬出されることはない」と明記しています。
しかし、寄港して短期間で出港をくりかえす原潜と違って、原子力空母は1年の半分は横須賀基地に停泊します。そのため「動力装置の修理」や艦内にたまった放射性物質の艦外搬出・処理が必要になったといわれます。原子力空母の母港化を機に、「エードメモワール」違反をただすこともせず、アメリカいいなりに、日本の領海・港湾内で放射能管理作業を認めるのはとうてい許せません。
「エードメモワール」が修理をしないと明記している「動力装置」は、「原子炉」を含む推進システムのことです。「動力装置」は放射能にさらされる可能性があります。そのため、原潜寄港反対の運動が高揚し、米政府は「日本国民の懸念を承知している」といって「原子炉」だけでなく「動力装置」そのものを修理しないと約束せざるをえなかったのです。岡田外相の見解は、絶対に通用しません。
放射性物質の「陸揚げを伴わない」からといって、空母から別の艦船に移し、処理してもいいというのも、「エードメモワール」に反する、ごまかしにすぎません。
ごまかしにごまかしを重ね、なしくずし的に原子力空母の修理に道を開くのを、政府はやめるべきです。
母港化を返上してこそ
政府が原子力空母の放射能「管理」作業を認めたのは、日米軍事同盟を絶対視し、原子力空母の横須賀母港化をこれからも維持するためです。日本は米原子力空母に立ち入りもできず、安全規制を適用することもできません。
横須賀市民と首都圏の住民を守るなら、政府は原子力空母の母港をきっぱり返上すべきです。