2010年4月4日(日)「しんぶん赤旗」
主張
MA米
農業破壊の輸入をやめよ
米価の下落が日本農業を暗いものにしているなか、下落の大きな要因になっているミニマムアクセス(最低輸入機会=MA)米を今後も輸入し続けるのかどうかが、あらためて問われています。
鳩山由紀夫政権は、MA米の輸入政策を見直さず、旧政権と同様に年間77万トンにのぼるMA枠の全量を輸入する姿勢をとっています。農業者をはじめ、食料自給率の引き上げを望む大多数の国民にも背を向けた姿勢です。
全量輸入は約束でない
MA米は、1994年に制定された世界貿易機関(WTO)協定で、それまで輸入割合の小さかった品目に輸入機会を提供するものとして設定されました。しかし、その全量を輸入するよう義務づけられたわけではありません。ところが、自公政権はそれを「義務」だと言い張り、国内に需要がないにもかかわらず、大量に輸入し続けてきました。
赤松広隆農水相は、全量輸入について「(WTO協定上)規定されているわけでもないし、約束があるわけではない」(1日の参院農水委員会、日本共産党の紙智子議員への答弁)と言明しました。
それにもかかわらず、同相は「国際約束」論を持ち出して、MA米の全量輸入を続けるという姿勢をとっています。農水相の頭には米国の圧力があるのではないか、と考えずにはいられません。
赤松農水相は昨年10月に訪米し、カーク米通商代表(USTR)と会談した際、MA米の全量輸入を達成すると約束したことが伝えられました。
MA枠の全量輸入が続くなか、2007年度は輸入量が70万トンにとどまりました。コメの需給が国際的にひっ迫し、価格が上昇したことが理由でした。ところが、米政府はこれにまで非難を浴びせてきました。
USTRが作成した『貿易障壁報告』09年版は、07年度の未達について日本の制度運営の「弱さを露呈した」と強調しました。08年度には「全量達成されると期待している」とし、日本の輸入入札過程を「厳密に監視し続ける」と高飛車な態度を示しました。
政府は08年度、77万トン全量を輸入しました。USTRは3月末に公表した10年版の『貿易障壁報告』で、「日本がWTOの輸入量約束を満たし続けることを期待する」とクギを刺しています。
赤松農水相はMA枠77万トンの全量を「国際的な約束としてきちんと守っていることの方が、結果的には日本の農業を守ることになる」などとして、全量輸入に固執しています。政策の転換を求める国民に対しては、「こうした約束そのものは政権が代わっても守っていかざるを得ない」と開き直る始末です。
自給率引き上げるには
政府は先月末、食料自給率を現在の41%から10年後に50%に引き上げるとした新しい「食料・農業・農村基本計画」を決定しました。それを果たすには、農政の抜本転換が不可欠です。
コメは国内で自給が可能な唯一の農作物です。それにもかかわらず、米価は生産費さえまかなえず、耕作放棄が拡大しています。MA米が国内の市場を圧迫しているのです。国内に需要のないMA米の輸入を中止することこそ、農政転換の筋道です。
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