2010年4月1日(木)「しんぶん赤旗」
財政運営戦略の素案 分かる
消費税増税 強く示唆
「超党派の取り組み」迫る
政府の国家戦略室が6月に策定する財政運営戦略と中期財政フレームの素案が31日までに明らかになりました。社会保障費の財源については、「社会保障制度改革、税制改革も含め、財源を中長期的に確保する姿勢を明確に示す」とし、消費税増税を強く示唆しています。
中期財政フレームは、歳入の見通しを基礎におきつつ、今後3年間(2011〜13年度)の歳出の大枠を示すものです。財政戦略の策定については、「党派を超えた取り組みが望まれる」とし、自民党との共同を想定しています。
債務残高の削減については、国内総生産(GDP)に対する債務残高比率を「安定的に縮減させる」こととしています。その中間目標として基礎的財政収支(プライマリーバランス)などの達成を4段階で定めます。新規施策や減税には恒久的な財源を確保する「ペイアズユーゴー原則」など財政運営ルールの確立も目指しています。
中期財政フレームで定める3年間の歳出の大枠については、総枠のみを示すか、社会保障や公共事業など主要項目を示すか、各省庁ごとに示すかなどを今後の検討課題としました。
また、首相や国家戦略担当相の裁量枠を設定したトップダウン型の編成方式を検討するとしています。
国と地方を合わせた債務残高比率の安定的縮減を可能にするため、(1)2011〜13年度の歳出の大枠を示す中期財政フレームを設定(2)基礎的財政収支赤字を半減(3)同収支の均衡化(4)同収支の黒字化―の4段階で目標達成時期を示します。
財政運営戦略の素案要旨
国家戦略室の検討会がまとめた財政運営戦略と中期財政フレームの素案要旨は次の通りです。
【財政運営戦略のイメージ】
【財政健全化目標】財政健全化のゴールは公的債務残高の対GDP比を安定的に縮減させていくことに求めつつ、その前提としてフロー目標を段階的に定める。達成目標時期は幅を持った時期(○○年代前半など)を設定することも考えられる。フロー目標はプライマリーバランスに代えて(債務の元利払い費を加味した)財政収支を用いることも考えられる。
【財政運営ルール】(1)トップダウン型の新たな予算編成方式(2)ペイアズユーゴー原則(3)財政赤字縮減ルール(4)景気循環要因を除いた「構造的財政赤字」縮減ルール―などが考えられる。
【中期財政フレームのイメージ】財政運営戦略との整合性を保ちつつ、3年間の歳出の大枠を定める。これに沿って各年度の具体的な概算要求と予算編成を行う。フレームは定期的に改定。フレームの経費区分は(1)総枠のみ(2)社会保障、公共事業など特に大きな経費の内訳を明示(3)主要経費別ないし各省別の内訳を明示―などが考えられる。
【その他】財政健全化は政権を超えて取り組まなければならない。党派を超えた取り組みが望まれる。
自民・民主 増税へ競演
今後の財政運営の戦略づくりで民主党政権と自民党が競演しています。自民党はすでに国会に「財政健全化責任」法案を提出しています。自民党案では、税収確保のためには、「消費税を含む税制の抜本的な改革」が必要だとしています。
もともと財政赤字が巨額に膨らんだのは、自民党政権下での大企業・ゼネコン優先の財政運営が原因。巨額の軍事費が聖域化されてきたことも財政赤字を助長しました。そのつけを消費税増税で国民に回すことは許されるものではありません。
ところが、菅直人財務相は、3月24日の記者会見で、「今さら(巨額赤字の)責任を問うという問題を超えて」議論することが重要であると発言し、自民党政権時代の財政運営を不問にする姿勢を示しました。さらに菅財務相は、「政権交代があった今だからこそ」、自民党とも公明党とも「超党派の場で議論する」ための「土俵が国会という場で生まれる」と述べています。今回明らかになった政府の財政運営戦略の策定方針でも、「党派を超えた取り組みが望まれる」と、わざわざ強調しています。財政運営の戦略づくりで、民主、自民が「大連立」状況という重大な局面になっています。
税制問題では、鳩山由紀夫首相は、参院予算委員会(3月12日)で「法人税が日本は高くて消費税が極めて低いというのは実態として事実であろうかと思います」と答弁したことは重大です。
財界団体の日本経団連は、自民党政権時代から、繰り返し法人税減税と消費税増税を政権に求めてきました。中期財政フレームの策定に関連して、経済同友会の桜井正光代表幹事も記者会見(2月16日)で「税制はどうあるべきかが必須で、消費税は当然出てくる課題」と消費税増税を求めています。
消費税は、「生まれも育ち」も「福祉」を口実にしてきました。しかし、消費税は低所得者ほど負担が重い大衆課税です。しかも、米国発の金融・経済危機で日本国内では、失業や貧困層が広がり、国民生活は深刻な状況になっています。日本経済の停滞は国内需要が落ち込んでいるのが原因。消費税を増税し、法人税を減税するというのは、「経済活性化」という経済対策としても方向が間違っています。(金子豊弘)